研究課題/領域番号 |
22350044
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
椎名 勇 東京理科大学, 理学部, 教授 (40246690)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機化学 / 有機合成化学 / 脱水縮合 / 不斉合成 / 不斉エステル化 / 速度論的光学分割 / 光学活性カルボン酸 |
研究概要 |
申請者は自ら開発した「置換安息香酸無水物法」の不斉バージョンを世界で始めて明らかとし、様々な光学活性カルボン酸エステルが生産できることを報告した。この方法では、遊離のカルボン酸とアルコールを原料として用いることができるため、基質一般性に富んだカルボン酸誘導体の不斉合成が可能となる。1~3年目の研究によって入手可能な種々のラセミアルコールの速度論的光学分割を試みたところ、(1)ベンジルアルコール型のラセミアルキルアリールカルビノールの速度論的光学分割、(2)フラン環やチオフェン環等のヘテロアリール基を有するラセミアルキルアリールカルビノールの速度論的光学分割、(3)C2対称性を有するベンジルアルコール型ラセミジオールの速度論的光学分割、(4)Ci対称性を有するベンジルアルコール型メソジオールの非対称化、(5)ラセミ2-ヒドロキシエステルの速度論的光学分割、(6)ラセミアルキルアルキニルカルビノールの速度論的光学分割が実現できることを確認した。特に本年度確立した(6)のラセミアルキルアルキニルカルビノールの速度論的光学分割法は、有用合成中間体の大量供給に役立つ画期的な反応であり、実際に抗肥満剤として知られているテトラヒドロリプスタチン(THL)の全合成に本手段を活用することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1~3年目の研究によって入手可能な種々のラセミアルコールの速度論的光学分割を試みたところ、(1)ベンジルアルコール型のラセミアルキルアリールカルビノールの速度論的光学分割、(2)フラン環やチオフェン環等のヘテロアリール基を有するラセミアルキルアリールカルビノールの速度論的光学分割、(3)C2対称性を有するベンジルアルコール型ラセミジオールの速度論的光学分割、(4)Ci対称性を有するベンジルアルコール型メソジオールの非対称化、(5)ラセミ2-ヒドロキシエステルの速度論的光学分割、(6)ラセミアルキルアルキニルカルビノールの速度論的光学分割が実現できることを確認した。 当初計画したロードマップに沿って着実に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに基質の適用範囲を広げ、ラセミ2-ヒドロキシエステルのみならずラセミ2-ヒドロキシアミドやラセミ2-ヒドロキシケトン、さらには環状構造を有するラクトンやラクタム型の光学活性な第2級アルコール類の速度論的光学分割法の開発を試みる。具体的には、縮合剤、触媒、求核剤ならびに求電子剤を用いて構成される遷移状態を予め計算し、高い選択性を与えると見込まれる化合物を絞り込む。さらに、候補として挙げた分子を実際に不斉エステル化に適用し反応溶媒、反応温度、反応時間等の効果を丹念に調べ、最も良好な結果を与える組み合わせを決定する。以前より5員環構造を有するパントラクトンは光学活性医薬品を供給する際に多用される出発原料であり、キラルなパントラクトンを与える簡便な手段の開発は工業的にも求められている。また、キラルな2-ヒドロキシ-ベータ-ラクタム類は抗生物質の原料として汎用される鍵化合物である。よって、これらの有効な速度論的光学分割手段の探究に注力する。
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