研究課題
昨年度我々は、不斉触媒である(S)-β-Np-BTMの存在下、ピバル酸無水物を脱水縮合剤として用い、求核剤にジ(α-ナフチル)メタノールを作用させることで種々の2-アリールプロピオン酸類が効率良く速度論的光学分割(KR)され高い反応速度比を与える現象を発見した。ここで確立したKRは光学的に純粋な両鏡像異性体をそれぞれ調製したい場合には有効な手段となるが、ラセミ体を原料とする方法であるため収率が50%を越えないという原則に縛られる。一方、特定の条件の下で原料のラセミ化を促すことができれば、ルシャトリエの法則に則り理論上100%の収率で一方の鏡像体に収束させることも可能になる。そこで我々はこの概念をラセミカルボン酸の不斉エステル化に適用し、ラセミ体のカルボン酸から100%に近い収率で光学的にほぼ純粋なカルボン酸エステルを与える新奇反応、すなわちラセミカルボン酸の動的速度論光学分割法(DKR)の開発を試みることにした。詳細な反応条件の検討を通じて上記DKR法は溶媒の極性に応じて効率が劇的に変化することを突き止め、最終的にN,N-ジメチルホルムアルデヒド(DMF)中で反応を行うことにより、様々な置換基を芳香環に導入した2-アリールプロピオン酸類がDKRの対象となり得ることが分かった。同様に、ラセミ体の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も一方の鏡像体に高収率で変換することができる。引き続き、イブプロフェンやナプロキセン等の汎用NSAIDsの光学活性体をさらに高い鏡像体過剰率で得るために、我々はDKRとKRを組み合わせて用いる手法(DKR/KR法)を立案した。実際に光学的に純粋なイブプロフェンをラセミイブプロフェンから収率良く調製し、本法の有効性の立証に成功した。すなわち、DKR/KR法を用いることにより、ラセミ体のNSAIDsを最大限の効率で一方のエナンチオマーへ偏らせ、目的とする(S)型化合物を大量に生産することが可能となった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
東京理科大学研究成果報告会(記者会見)の公開動画
すべて 2015 2014 2010 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 11件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Tetrahedron Letters
巻: 56 ページ: 1356-1359
10.1016/j.tetlet.2015.01.181
European Journal of Medicinal Chemistry
巻: 71 ページ: 290-305
10.1016/j.ejmech.2013.11.009
有機合成化学協会誌
巻: 72 ページ: 919-928
10.5059/yukigoseikyokaishi.72.919
Beilstein Journal of Organic Chemistry
巻: 10 ページ: 2421-2427
10.3762/bjoc.10.252
European Journal of Cancer
巻: 50, Supplement 6 ページ: 185-186
10.1016/S0959-8049(14)70700-2
https://www.youtube.com/watch?v=fy_Zy8hKzDc&feature=youtu.be
https://www.youtube.com/watch?v=3vKArZh8d4g&feature=youtu.be