研究概要 |
ベンゼン環は、フラーレンやカーボンナノチューブなどの様々な機能性化合物に含まれ、分子に多様な構造や機能をもたらす特異なπ電子の特性に寄与している骨格である。そして、このベンゼン環を複数結合させ、環構造を形成した環状ポリフェニレン化合物も、その特異的なπ電子共役系により電気的、光学的機能が期待される化合物群がある。一方報告者は、分子間、分子内連続的不斉付加環化反応を利用し、ベンゼン環が4つ連結されたテトラフェニレン化合物の不斉合成を達成した。そこで、この合成戦略を展開し、種々の環状ポリフェニレン類の合成とその物性評価を行った。 これまで、ベンゼン環のオルト位に末端アルキン部分と1,6-ジイン部分を有するトリインを用いて、o,o,o,o-テトラフェニレン骨格の構築を行った。そこで、置換位置をメタ位に代えたトリインを用いたところ、低収率ながら、これまで合成例がほとんどないo,m,o,m-テトラフェニレンが、二量体として得られた。さらに不斉触媒を用いることで、これまで例がない光学活性体の不斉合成を達成した。さらに、オルト位にメトキシ基を有するメタ置換トリインを用いだ場合、その立体障害により二量体の生成が抑制され、三量体であるo,m,o,mo,m-ヘキサフェニレン化合物が、99%以上の鏡像体過剰率で得られた 次に、置換位置をパラ位に代えたトリインを用いたところ、三量化、ならびに四量化が進行し、o,p,o,p,o,p-ヘキサフェニレン化合物とo,p,o,p,o,p,o,p-オクタフェニレン化合物が総収率80%で得られた。
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