研究概要 |
光刺激による高分子のコンホメーション制御と物性制御を実現する目的で、ヘリックス-ランダムコイル転移、および、ランダムコイル-ヘリックス転移を実現できる高分子の構造を探索した。代表者らの従来の研究成果から、光照射によるビフェニル基のねじれ-平面転移が高分子鎖の構造変化の誘起に有効であることが判明していたため、側鎖にビフェニル残基を有する光学活性ならせん状ポリ[アクリル酸2,7-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオニルメチル](poly-1)およびポリ[アクリル酸2,7-ビス(4-t-ブチルフェニル)-9-メチルフルオニル](poly-2)、光学活性ならせん状ポリ[2,7-ビス(4-t-ブチルフェニル)ジベンゾフルベン](poly-3)、および光学不活性なポリ[2,5-ビス(4-t-ブチルフェニル)スチレン](poly-4)の合成を行い、これらの光誘起構造転移について検討した。非偏光照射によりpoly-1およびpoly-2は光ラセミ化と側鎖基の脱離を併発しらせん構造をもつポリマーからランダムコイル構造を有するポリアクリル酸が生じた。後者の光反応は、高分子反応の中でこれまでで最も速いものであることが明らかになった。poly-3は非偏光照射によって部分的なラセミ化およびヘリックスランダムコイル転移を起こした。Poly-4は薄膜固体状態でYAGレーザー光源から得られる円偏光を照射すると強い円偏光二色性スペクトルを示し、ランダム構造あるいはラセミのらせん構造から一方向巻きのらせんが誘起された可能性がある。このポリマーの構造詳細についてはさらに検討が必要と考えられた。
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