研究概要 |
光刺激による高分子のコンホメーション制御と物性制御を実現する目的で、前年度に引き続き、ランダムコイル-ヘリックス転移を実現できる高分子の構造を研究した。代表者らの従来の研究成果から、光照射によるビフェニル基のねじれ-平面転移を起こす構造を主鎖内に含むポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)(PDOF)が円偏光により光学活性化すること見出しており、この現象に対する高分子の分子量の影響を調べた。この目的で2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレンを原料とし、Niを触媒に用いるYamamoto重合法を行った。得られたポリマーの分子量をSECによりポリスチレン換算で見積もった結果、分子量が5,000程度から90,000程度のポリマーが得られたことが分かった。これらを用いて円偏光を照射する実験を行ったところ、溶液中では不斉誘起が全く起こらなかった一方で、ポリマー溶液のキャストフィルム(薄膜)に対する円偏光照射によって不斉誘起が起こることが分かった。分子量の効果について調査した結果、10,000程度以下のポリマーについては光学活性化が難しく、10,000程度から90,000程度の分子量では光学活性化が進行することが明らかになった。 加えて、分子量10,000程度以上のポリマーについては吸収スペクトルにおいて400-440nm程度の領域にβ相に基づく吸収帯が観測され、β相の割合が多いほど効率よく光学活性化が進行することが明らかになった。
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