研究概要 |
光刺激による高分子のコンホメーション制御と物性制御を実現する目的で、前年度に引き続き、ランダムコイル-ヘリックス転移を実現できる高分子の構造を研究した。代表者らの従来の研究成果から、光照射によるビフェニル基のねじれ-平面転移を起こす構造を主 鎖内に含むポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)(PDOF)が円偏光により光学活性化すること見出しており、この現象に関する詳細な知見を得た。まず、円偏光で誘起されたキラル構造の熱および直線偏光にたいする安定性を検討したところ、比較的高い非対称性を示す試料については、光および直線偏光照射によりCDスペクトル強度が大きく減少したが、比較的小さい非対称性を有する試料についてはスペクトル強度は増大した。次に、従来不斉誘起は固体フィルムでのみ可能であったが、溶媒系探索の結果、トルエン-メタノール今後溶媒中に懸濁させた状態でも円偏光による不斉誘起が可能であることを見出した。この成果は円偏光で作ったキラルポリマーを塗布加工できる可能性に繋がるものである。さらに、前年度検討したβ相と不斉誘起の関係についての知見をもとに、β相の割合を大きくした薄膜に円偏光照射することにより、Kuhnの非対称性因子(gCD)が10のマイナス2乗オーダーの高い非対対称性を達成することができた。加えて、本研究で調整した光学活性なPDOFの薄膜が高効率な円偏光発光を示すことを見出した。
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