要修正代表的な天然高分子であるタンパク質やDNAはらせん構造を形成している。これらの精緻ならせん構造は,有機化学により明快に説明できる分子設計に基づいて構築されており,さらに三次構造,四次構造を形成して森羅万象の生命現象を担っている。らせんを形成する高分子の合成研究としては,α-ヘリックスや310-ヘリックスを形成するペプチド合成に関するもの,人工的なDNA合成と二重らせんの構築に関するものが多い。側鎖に親水性のオリゴエチレングリコール鎖を有するポリフェニレンエチニレンは,親水性溶媒中で折り畳みらせん構造を形成する。高次構造形成の駆動力は,主鎖・側鎖間の疎水・親水性バランスと,主鎖フェニレン間のπ-スタッキングである。これに対して筆者らは,D-ヒドロキシフェニルグリシン由来のポリフェニレンエチニレンが,疎水性溶媒中で折り畳みらせん構造を形成することを見出している。本研究では,様々なポリフェニレンエチニレンの合成と高次構造形成,刺激応答性について検討を実施した。 1.アゾベンゼンを有する光学活性ポリフェニレンエチニレン:主鎖にアゾベンゼン部位を,側鎖に長鎖アルキル基を含有するポリフェニレンエチニレンは,疎水性溶媒中で折り畳みらせん構造を形成し,紫外光および可視光照射によりアゾベンゼン部位のシス・トランス異性化に伴い,可逆的にらせん構造とランダム構造の間で高次構造を変化させることを見出し,光応答性スイッチング材料として活用可能なことを見出した。 2. 種々の光吸収置換基を有する学活性ポリフェニレンエチニレン:ナフタレン・アントラセン・ピレン部位を有するポリフェニレンエチニレンは青~黄色の様々な蛍光を発する光機能性高分子であることを確認した。 3. 光学活性ターフェニレンジエチニレン:このポリマーは,単分子で高次構造を形成せず,極性溶媒中で光学活性会合体を形成することを見出した。
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