研究課題/領域番号 |
22350052
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤木 道也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (00346313)
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キーワード | パリティ非保存 / らせん / 光学活性 / 不斉 |
研究概要 |
パリティー非保存性の弱い核力は中性子-電子間に働く弱中性電流(自発的なループ電流)として、すべての原子・分子・高分子の左右を区別するとされている。1980年代に、いくつかの原子蒸気から光学活性信号が検出され、原子の弱中性電流の存在が実証された。一方、不斉分子・らせん高分子も弱中性電流のため左右非対称との理論が1980年代より示されてきたが左右エネルギー差が微少であるため実験的検証が遅れていた。本研究は円偏光分光による精密測定解析を容易にするシグマ共役・パイ共役高分子を用い、(1)弱中性電流説に基づく左右の微小な偏りを検出し、(2)微少な偏りからホモキラルならせん高分子が希薄溶液・微粒子・薄膜として発生・増幅していくシナリオを描き、(3)円偏光発光性を示すらせん高分子群を設計構築することにある。H23年度は、(R)/(S)-不斉側鎖基を有するポリフルオレンを用いて、希薄溶液と凝集体において、CD分光、NMR分光、粘度測定などを系統的に測定し、符号や強度などを比較した。パリティーが保存されていないという間接的なデータを得たところである。30-40種類の溶媒について振動円二色性を系統的に測定し、比較検討しているところである。さらに東京理科大学グループと共同研究で、ゾルゲル転移を起こすアキラル高分子中に微量ドープしたアキラル蛍光色素から撹拌渦による光学活性な発光現象の発生・反転・消失現象を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初アキラルボリシランやアキラルポリフルオレンを中心に円偏光信号の自発的発生を申請者自身および修士・博士学生数人とともに何度も確認してきた。しかしながら修論発表では公表したが学会発表などは控えて来た。その本質的な原因を探るため、アキラルポリシランやアキラルポリフルオレンに特異的であるのか否か明らかにするため、ポリマーを溶解させている(分光グレード/高純度グレードの)アキラル溶媒/キラル溶媒(約15種類)について、VCD分光器メーカーの技術者の協力を得ながらVCD測定を行っている。現在、アキラル構造にも関わらずVCD信号の出現を観測している。
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今後の研究の推進方策 |
今後この知見をもとに、アキラル低分子(液体状態)をさらに40種類以上に増やしてVCD測定結果についての一般性を検討する。Gaussian計算結果と照らし合わせながら解析を進める。アキラル溶媒に溶かしたアキラルボリシランやアキラルポリフルオレンの振舞いについて詳細に検討する。VCD測定に関しては分光器メーカーの空き時間帯を利用し、厚意(無料)で測定して頂いている。高価だがVCD分光器(約1500万円)を導入し測定していきたい。
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