本研究では、高機能・高性能ポリマー材料の簡便かつ新規な合成法の開拓を目的として、ジエンモノマーと非ビニル系化合物のラジカル交互共重合で発現する位置特異的な成長反応に着目し、分子ならびに反応設計によってポリマーの構造制御が可能なラジカル重合反応系を開拓した。成長反応で高いモノマーおよび位置選択性を発現できるようにジエンモノマーの分子設計を行うと同時に、非ビニル系化合物をコモノマーとして活用することで新規重合系を開発、共重合体の精密構造制御を行い、既存材料に比べて優れた熱,機械、光学特性を示す新規ジエン系ポリマー材料を設計した。 平成24年度は、これまでの取り組んできた二酸化硫黄とジエンモノマーの位置特異的ラジカル交互共重合の成長反応機構の解析、生成ポリジエンスルホンの構造ならびに基本物性評価、水素添加による耐熱性ポリマーの設計に関して検討を継続しながら、さらに、高機能化・高性能化をめざした分子設計を行い、耐熱透明ポリマー材料の開発を進めた。昨年度まで行ってきた高機能・高性能ポリジエンスルホンの開発をさらに展開し、硫黄原子を含むジエンモノマーを用いた高性能化ポリジエンスルホンの合成と物性評価を行い、ポリマーの光学特性に及ぼす硫黄原子や官能基団の導入数、位置の効果を明らかにし、環状構造モノマーを用いるポリジエンスルホンの合成と物性評価を試みた。また、各種ジエンモノマーのラジカル重合系における位置選択的重合ならびに定序配列ラジカル共重合を利用して高透明性耐熱樹脂の合成を試みた結果、主鎖ならびに側鎖近傍への環構造の導入とモノマー組成ならびに繰り返し構造の制御によってガラス転移温度を向上することに成功した。ジエンモノマーの環構造に歪を持たせることで重合反応性は増大できることがわかった。
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