研究概要 |
有機溶媒に可溶な半導体である金属-ハロゲン化物系有機・無機複合ペロブスカイトについて、有機カチオンや金属、ハロゲンの選択による電子構造・ドーピング量・電気物性の変化を系統的に調べ、電子構造/物性設計の指針を見いだすことを一つの目的とする。また、溶液プロセス可能な半導体材料として、他の有機化合物も含め、ドーピング手法開発と実際にデバイス構造での性能の調査も目的とする。 Sn-I系立方晶ペロブスカイトでのホールドーピングによるキャリア濃度の増加の定量的な見積りはこれまで不可能だった。この点についてホール効果の測定を行い、hole濃度がas-grown状態で0.02%、人為的なドーピングを行うことで0.16%に増加することを明らかにした。また、立方晶の(Pb,Sn)-IおよびSn-(Br,I) 合金系のバルク結晶の作製を行い、伝導度測定によりSn-I系の自発的ドーピングによる高伝導化と光学測定から不均質なドメイン形成が起きていることを見出している。層状ペロブスカイト系では(Pb,Sn)-I合金系について、カチオン探索を進め、有機溶媒のみで薄膜の作製が可能なカチオンを見出すことができた。スピンコートにより作製した薄膜は配向性が高いことが見出されたが、整流特性は不明瞭になり、組成分布が均質化することが分かった。FET素子を組み特性の測定を行ってみたが、良好な特性は得られていない。また、n型の特性が期待できるCu-X系の層状ペロブスカイトについてバルク結晶を作製し、1 eV程度のバンドギャップの系の構築に成功している。FET素子作製に役立つと考えられる接触型ドーピングによる有機半導体結晶表面の高伝導化については、二成分錯形成と電荷注入の両方の機構が働くことを明らかにした。この手法を応用することで、ダイオード構造を簡便に作製できることから、種々の半導体物質について適用を検討している。
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