研究概要 |
分子を基調とする新規磁性体の中から、メモリー、表示材料、磁気抵抗、マルチフェロイクスなどの複合機能性材料への応用発展性を示すことは今後のエレクトロニクスのために重要である。一方で分子性材料が無機物質では考えられなかったような特性も有することから、「分子性物質ならでは」という性質の導入も必要である。我々はこれまでに有機無機の区別なく、4f,3d,2pスピンを組み合わせて研究を進めてきた。本課題ではこのような複合スピン系に、柔軟性、加工性、反応性、光吸収などの有機由来・分子由来の機能を導入し具体化する。 1. 機能性低次元磁石:ラジカル-コバルト系単一次元鎖磁石からバルクの磁性との共存の見られる系が見つかり、これまでの世界最高の保磁力をさらに更新する程度の「硬い」磁性材料を開発した。ラジカル-銅系高スピン分子の開発の過程で、単結晶を維持した固相-固相の相転移を示しそれに伴ってラジカルスピンと金属スピンの磁気的カップリングを強磁性的なものから反強磁性的なものへ転じる物質群を見いだした。これらは、二中心もしくは三中心スピンクロスオーバー物質という観点からも興味が持たれる。 2. 分子包接誘起磁性体、磁気検出型イオンセンサー:ラジカル置換のホスト・配位子分子を分子設計し、実際に合成した。金属イオンの有無に従って、開いた構造から閉じた構造に変化する。それに伴って、磁気的相互作用の大きさを変化させたり、強磁性/反強磁性をスイッチさせることに成功した。 3. 単分子磁石・単鎖磁石:いくつかの4f-3d系単分子磁石を合成開発し、高周波ESRを用いて4f-3d間交換相互作用を決定した。ヘテロ金属二核、三核、五核錯体において、相互作用定数と4fスピン数との間に相関があることがわかった。元素周期律に新たな知見を与えることができた。
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