研究課題/領域番号 |
22350059
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石田 尚行 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 教授 (00232306)
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キーワード | 分子性磁性体 / 集積型金属錯体 / 超分子科学 / 単分子磁石 / 高スピン分子 / 相転移 |
研究概要 |
分子を基調とする新規磁性体の中から、メモリー、表示材料、磁気抵抗、マルチフェロイクスなどの複合機能性材料への応用発展性を示すことは今後のエレクトロニクスのために重要である。一方で分子性材料が無機物質では考えられなかったような特性も有することから、「分子性物質ならでは」という性質の導入も必要である。本課題ではこのような複合スピン系に、柔軟性、加工性、反応性ぐ光吸収などの有機由来・分子由来の機能を導入し具体化しつつある。 1.フォトクロミック有機磁性体:基底三重項ビラジカル(bpbn)の一連化合物群が、逐次構造相転移を示し、反磁性からS=1/2常磁性、続いてS=1常磁性となることを明らかにしている。反磁性相は薄いオレンジ色、常磁性相は濃赤色である。この一つの誘導体で、ビラジカルであるにも関わらず幅広い温度領域でS=1/2常磁性を示すものを見いだした。また、インダンジオン骨格を用いて、フォトクロミック材料でありなおかつ光誘起磁性材料にもなる系の応用展開を目指した。具体的には、光反応前後によるスピン定量など基礎的なデータを収集した。 2.分子包擦誘起磁性体、磁気検出型イオンセンサー:ラジカル置換のホスト・配位子分子を合成開発した。金属イオンの有無に従って、開いた構造から閉じた構造に変化する。ポリエーテル鎖の長さに依存して、カルシウムイオンやバリウムイオンを選択的に取り込むことを電子スピン共鳴法から明らかにした。 3.有機ラジカル配位磁性材料:いくつかの4f-3d系単分子磁石を合成開発し、高周波ESRを用いて4f-3d間交換相互作用を決定している。有機ラジカルと希土類からなるヘテロスピン系を合成開発した。4f-2p系はこれまで類例が少なく、構造磁性相関の解析が発展すれば、Nd-Fe-B磁石の改質へ繋がるような材料設計指針を提案する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁化率の変化を伴う相転移物質の開発を主眼におき、2pスピン系や3dスピン系では順調に合成開発が進められている。さらに発展的課題として、磁気カップリングの元素依存性や構造依存性について重要な知見を得ることができた。ホストゲスト化学の導入も一定の成果をおさめた。
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今後の研究の推進方策 |
光反応の磁性材料の応用の面で研究上の停滞が見られる。有機骨格を用いた研究は、錯化学におけるスピンクロスオーバーほど実例が多くない。しかし、有機化合物は軽量かつ加工性に優位な点があり、ここに注力して研究展開を期待したい。
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