研究概要 |
申請者が見出した分子集合性キャビタンドカプセルを基盤に超分子化学と機能物質化学の探求を行った。 [テーマ1]水素結合に基づくヘテロカプセルの超分子ポリマーへの展開:超分子カプセルポリマーを構築するにあたり、本年度は、ダンベル型ホスト分子(スペーサーの両端に水素結合性キャビタンドを有するモノマー)の合成を達成した。次年度は、超分子カプセルポリマーを構築する実験に取り組む。 [テーマ2]動的ホウ酸エステル結合キャビタンドカプセルのナノ保護容器としての展開:非常に高い発光特性を示すがより不安定になるビス(アリールエチニル)アントラセン誘導体ならびにそのオリゴマーを本カプセルに包接させることに成功し、包接(カプセル化)によって本ゲスト群の、1)光に対する大幅な安定性の向上、2)固体中での濃度消光による蛍光量子収率の低下を抑制することを見出した。 [テーマ3]動的ホウ酸エステル結合に基づくキラルなキャビタンドカプセル:テトラホウ酸キャビタンドと1,2-ビス(カテコール)エタンから成る動的ホウ酸エステル結合に基づくカプセルをキラル化するにあたり、キラルなビス(カテコール)エタンリンカーを合成する必要がある。本年度は、昨年度合成した不斉中心の水酸基をアセトニド保護したキラルな1,2-ビス(カテコール)-1,2-ジヒドロキシエタンを用いてキラルカプセルの構築を検討した,しかし、アセトニドで配座固定しているため定量的にカプセルを構築できないことが判明した。そこで、配座の柔らかい光学活性リンカーを合成すべく、カテコール水酸基をMOM保護したキラルな1,2-ビス(カテコール)-1,2-ジメトキシエタン前駆体を合成したが、MOM保護基を脱保護する際に不斉中心をなすメトキシ基が脱離してパラキノンメチド中間体を経て目的化合物を得ることができなかった。そこでこの問題を解決すべく合成戦略を再検討し、ラセミ体だが、不斉中心をもつ1,2-ビス(カテコール)-1,2-ジメチルエタン、即ち、2,3-ビス(カテコール)ブタンの合成に成功した。次年度は、このラセミ体を光学分割して、キラルカプセルを構築する実験に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1:合成を達成したダンベル型ホスト分子(スペーサーの両端に水素結合性キャビタンドを有するモノマー)を用いて、最終年度は、超分子カプセルポリマーの構築と物性評価の実験に取り組む。 テーマ2:本年度見出したビス(アリールエチニル)アントラセン包接カプセルのこ光子吸収特性を調べる。 テーマ3:ラセミ体だが不斉中心をもつ1,2-ビス(カテコール)-1,2-ジメチルエタン、即ち、2,3-ビス(カテコール)ブタンの合成に成功した。最終年度は、このラセミ体を光学分割してキラルカプセルを構築し、1)不斉分子認識包接、2)包接キラルゲストの一方向回転制御の実験に取り組む。
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