研究課題/領域番号 |
22350061
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
津田 明彦 神戸大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20359657)
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キーワード | 超分子反応 / 光反応 / 分子認識 / ハロメタン / 光分解 / ポリカーボネート / 尿素 |
研究概要 |
タンパク質などの生体関連物質は金属イオンの認識によってその構造や機能を変化させたり、特異な反応を引き起こす。最近、我々は金属イオンの取り込みにより形成する超分子錯体が金属の電子吸引効果により自身の反応性を高め、Diels-Alder反応などの化学反応を大きく加速させることを見出した。我々はこのような分子を自己活性化超分子と呼び、様々な新奇自己活性化超分子のデザインと反応を探索してきた。本研究では自己活性化超分子反応のさらなる発展として、オリゴエチレン鎖をキノンに連結したホスト基質分子【QE_n(n=O-3)】とオレフィンによる、新たな超分子光反応の開発を企てた。オリゴエチレン鎖は金属イオンを強く包接することで知られている。このQEnと金属イオンが強く錯形成すると、基底状態や反応中間体の構造や電子状態に影習を与え、光反応をコントロールできるのではないかと考えた。側鎖が最も長いQE_3は、2,3-dimethyl-2-buteneとの光反応によって主として4種類の生成物を与えたが、金属イオンの存在下では生成物の高い選択性が現れた。一方、側鎖の短いQE_Oではそのような生成物の変化は見られなかった。ここで見られた現象は、側鎖の長さ、および金属イオンの価数と大きさに依存し、金属イオンを強く取り込むことができる組合せにおいてそのような現象が現れることを見出した。 また、本研究過程において我々はクロロホルムなどの光分解によって生じる分解生成物を利用して、新奇なハロメタンの光リサイクル反応の開発に成功した。我々はそれを用いた様々な新奇有機反応を見出し、尿素誘導体や炭酸エステル誘導体の合成に成功し、さらには工業的に極めて利用価値の高いポリカーボネートを高効率で安価に合成することに成功した(特願2012-048180)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた新奇な超分子合成化学を見出し、計画に沿った進展が見られている。 一方、上記提案とは違った方向にも研究を広げたことで、これまでに全く例がないハロメタンの光リサイクル反応の開発に成功した。クロロホルムを原料としてポリカーボネートなどのポリマーを合成できた例はこれまでに全く知られておらず、極めて実用性の高い化学反応として発展を遂げることは間違いない。
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今後の研究の推進方策 |
ここで発見したハロメタンの光リサイクル反応を、合成化学を中心に様々な方面へ展開する。 1.ハロメタンの光リサイクル反応の実用性をアピールするため、クロロホルムを原料として様々な有用な有機化合物およびポリマー合成を試みる。 2.ハロメタンはF,Cl,Br,lの組合せで様々なものが存在する。それらのハロメタンの光リサイクル反応は、それぞれに特徴があるため、それらを個々に調査する。 3.ハロメタンの光リサイクル反応と超分子反応のコンセプトを組合せて、本発見のさらなる発展を目指す。
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