半導体ナノ結晶の会合とその構造制御について検討を進めた。主に磁気半導体であるEuXナノ結晶について検討を行った。EuX磁性半導体は将来の光磁気材料として重要視されている。その光磁気特性の増強のためには、光励起状態で他の半導体との間での光誘起電子移動や光誘起スピン分極を利用することが有効と期待される。従来からナノ結晶が調整されてきたEuSと半導体であるPbSはいずれもFm3m型の格子を有しており、その格子定数はそれぞれ0.5957nmおよび0.5924nmと非常に近い。このことを利用して、両者を多層積層する事で、人工超格子が構築され、光誘起スピン分極が増強され光磁気特性の増強が報告されてきた。そこで、本研究では両者のコアシェル構造ナノ結晶を構築し、新たな光磁気ナノ結晶材料の合成の可能性を検討した。あらかじめ調整したPbSナノ結晶溶液にEu-S錯体プレカーサーを添加して熱処理することにより調整した。得られたナノ結晶はXRDの結果PbS/EuSコアシェル構造であることが見いだされた。さらにHAADF-STEMを観察した結果、コア領域にPbが偏在し、シェル領域にEuが偏在するコアシェル構造であることが見いだされた。XPS計測を行った結果表面にはEu(III)イオンが偏在したが、Arイオンスパッターにより表面層を除去することでPbが露出することが見いだされPbS/EuSコアシェル構造が確認された。
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