研究概要 |
半導体ナノ結晶の精密合成と超格子構造制御に取り組んだ。半導体ナノ結晶材料として主に、CdSe,CdTe,CdS等のCd-カルコゲナイド、CdXとEuS等の希土類半導体ナノ結晶を中心に取り組んだ。PbS/EuSコアシェル構造について、光磁気特性(MCD)を検討した結果、EuSナノ結晶に比べて顕著な増強効果が見いだされた。また光磁気効果の活性波長領域が短波長側にもシフトした。元のPbSの影響にはMCD活性は見いだされず、PbSとEuSとの複合効果が見いだされた。また最表面にはEu(III)が見いだされており、これがEu203等の酸化物の存在を示唆したことから、小角X線散乱計測を行った。その結果、表面に0.05nm程度のEu203層が存在することが明らかになった。 一方、CdX系半導体ナノ結晶に関しては、CdSとCdTeの複合化を検討した。あらかじめ調整したCdSナノ結晶およびナノロッド溶液にCd(OAc)2とTe-2価イオンを添加し、180度で加熱処理を行う事でCdS表面にCdTeナノ結晶を融着させることに成功した。その結果、ナノ結晶同士が連結したナノワイヤー構造を調整することに成功した。ここで処理温度の180度はナノ結晶表面の表面保護分子が面選択的に脱離する温度であり、反応温度を240度にすると面選択性がなくなりCdSの周囲が非選択的にCdTeに被覆される事でコアシェル構造が形成される。このナノワイヤーにおいてはCdTeとCdSとが交互に偏在していることをHAADF-STEM計測から明らかにした。このCdTeとCdSの組み合わせは交互積層薄膜が化合物半導体太陽電池として実用化されていることから、今後太陽電池としての展開が期待される。
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