これまでに、培養法による生分解性プラスチックの分解菌の単離や分解に関与する微生物群集構造の知見が得られてきた。しかし、培養法は自然界に生息する微生物のうち99%に上るといわれる培養困難な状態の微生物を含めないため、自然環境中で実際に作用し、生分解性プラスチック分解に寄与している微生物は未解明であると言える。また、メタゲノム法は環境中の全DNAを対象に解析を行うため、分解に関与する微生物のみに焦点を当てた解析を行うことは困難であった。そこで本研究では13Cでラベルをしたプラスチックを用いることにより、分解菌のDNAのみを選択的に抽出、解析し、環境中での分解菌の動態を解析することを目的とした。 本研究では生分解性プラスチックの中でも特にPHA(polyhydroxy alkanoate)を用いて実験を行った。13C-PHAフィルムを土壌に埋設し、PHA分解菌に焦点を当てた解析を行った。13C-PHAフィルムより経時的に回収したDNAを塩化セシウム密度勾配遠心に供し、13C-DNAのみを選択的に回収した。その結果、13C-PHA由来DNAはほぼ13C-DNAで構成されていることが明らかとなった。このことより、PHAフィルム表面に存在する微生物のほとんどがPHAを資化していることが示された。 また、16SrDNAをPCRで増幅し、T-RFLP解析およびクローン解析を行った結果、既知のPHA分解菌とPHA生産菌が優占種となっていることが明らかになった。また、埋設期間中、PHA表面上の微生物群集構造にあまり変化は見られなかった。一方、優占種以外の微生物種の中には、これまでにPHA分解菌として報告のない菌が多数検出されたことから、新規PHB分解菌の存在が示唆された。
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