高分散Ba種上に吸着したNO2-種が反応中間体として作用することを昨年度までに検討したin situ FT-IR測定により明らかにしているが、本年度は安定同位体ガス(15NO)を用いた反応解析によりNO2-中間体の反応性と反応機構の解析を行った。Ba-Y2O3触媒上でのNO直接分解反応において、14NOガスから15NOガスに切り替えた直後に生成する窒素の同位体分布(14N2、14N15N、15N2)を質量分析計により観測したところ、切り替え直後に14N15Nが生成した後、その消失にともない15N2が生成することがわかった。反応温度を高くすることにより14N15Nの生成速度が向上したことから、吸着NO2-種が反応に関与すること、吸着NO2-種が気相のNOと反応すること、この反応が律速段階であることを推察した。そこで、より高活性なNO直接分解触媒の創生を目指し、吸着NO2-種の生成と反応性の向上を実現するため、これまでに得られた知見である担体酸化物(本研究では希土類酸化物)の塩基性制御とBaのナノ分散担持の観点から研究を進めた。Baを担持した酸化イットリウム(Ba-Y2O3)触媒の塩基性を制御するため、塩基性が弱い酸化セリウム(CeO2)の添加効果を検討したところ、僅か1mol%のCeO2添加により強い塩基性に由来するBaCO3の生成が大きく抑制されることをCO2-TPD測定より明らかにし、10mol%以上の添加量においてはBaCO3の生成はなく、CeO2-Y2O3表面にBaが高分散担持されることを見出した。またBa-Y2O3触媒のNO分解活性はCeO2の添加により向上し、10mol% CeO2を添加した触媒で最も高いNO分解活性が得られた。担体酸化物の塩基性を制御し、触媒活性種であるBaのナノ分散を実現することにより、高活性なNO直接分解触媒を創生することができた。
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