研究課題/領域番号 |
22350069
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大木 章 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 教授 (20127989)
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研究分担者 |
中島 常憲 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 助教 (70284908)
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キーワード | 水産廃棄物 / 廃棄物再資源化 / 水銀 / セレン / 水熱処理 / サイズ排除クリマトグラフィー / セレノプロテイン / 発酵処理 |
研究概要 |
魚肉試料(クロマグロとサバ)についてオートクレープ中(220℃)で水熱処理(亜臨界水処理)を行い、水相中の水銀およびセレンの分析を行った。処理時間の増加とともに水相中の全水銀濃度は増加し、このほとんどがメチル水銀であり、50-60%の回収率であった。これは、魚肉中に含まれる無機水銀(Hg^<2+>)およびメチル水銀(CH_3Hg^+)が水相中に溶出し、無機水銀は原子状水銀に還元されて気化するためと考えられる。水相中のセレンについても、処理時間の増加とともに濃度は増加したが、回収率はほぼ100%であった。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)-ICP-MSによる分析の結果、魚肉中に含まれていた不溶性のセレノプロテインが、水熱処理により加水分解され、セレノペプチドになり水相中へ溶出し、これは処理時間の経過とともに低分子量化していくことがわかった。水熱処理後の水相をSEC-UV検出器で分析した場合も同様のクロマトグラムを与えるので、セレノプロテインは通常のタンパク質と同様に加水分解されていると考えられる。以上の結果により、魚肉中でセレノプロテインに結合して安定化されていたメチル水銀が、セレノプロテインの加水分解により水相中に溶出する機構が提案された。 魚肉試料の発酵処理(堆肥化)を行った場合には、魚肉中に含まれていたメチル水銀が、処理時間の経過とともに脱メチル化して無機水銀が生じた。魚肉中の水銀は、1-メルカプトエタノール溶液のようなタンパク質分解剤を用いると抽出されるが、希塩酸などではほとんど抽出されない。しかしながら、発酵処理後は、希塩酸によりかなりの割合の水銀が抽出されるようになった。これは、発酵処理によりセレノプロテインが加水分解し、不溶性のセレノプロテインに結合していた水銀が抽出されやすくなったためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚肉試料の水熱処理において、魚肉中に含まれる水銀やセレンの運命を明らかにした。特に、水相中にメチル水銀が溶出することを見出し、排水処理や製品中への混入を注意する必要があることを示した。また、魚肉の発酵処理における水銀やセレンの運命についても、種々の知見が得られつつあり、残り1年で全体の研究目的達成は可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
発酵処理および水熱処理過程において、魚肉中に含まれる水銀とセレンの存在形態がどのように変化するかを、代表的魚類の種類や処理条件によって整理し、系統的知見を得る。水相中に存在するメチル水銀種やセレン種について、有毒性を簡易毒性試験で評価する。以上の情報をもとに、水産廃棄物リサイクルについて、有毒種生成の少ない処理条件の提言を行う。
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