研究概要 |
本研究では、化学的アプローチを用いて、細胞内におけるヒトテロメアDNAとヒトテロメアRNAの構造・機能を明らかにすることによって、染色体構造の安定化、老化の調節、がん化などにおけるテロメアの分子作用機構を解明し、得られた基礎情報に基づいてテロメアをダーゲットとするがん標的治療の新手法の開発を目的としている。本年度は、化学的手法を用いてヒトテロメアRNA構造の解析や、蛍光プローブ、光反応性およびクリックケミストリーを利用して細胞内でのテロメアRNA、DNAおよびハイブリッドテロメアDNA/RNAの分子構造を解明することを研究対象として、有機化学と光化学の両側面からヒトテロメアDNA/RNA構造の特異的な特性評価や、光架橋により有効なテロメラーゼ阻害することを効率的に進めた。その結果、NMR構造解析により、ヒトテロメアRNAがウラシル4分子体を形成する四重鎖構造を発見した(J.Am.Chem.Soc.132,7231,2010.)。この構造は新たな抗ガン剤開発のための治療ターゲットとなる可能性が期待されている。さらに化学蛍光プローブを用いて、生細胞内のヒトテロメアRNAの構造を可視化することに成功した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.107,14579,2010.)。また光応答性DNAを用いて、光架橋により有効なテロメラーゼ阻害することによるガン細胞のみを選択的に死滅させる方法を開発し(J.Am.Chem.Soc.132,631,2010.)、環状型ヘリセン小分子によるテロメラーゼ活性のエナンチオ選択的な阻害することに成功した(J.Am.Chem.Soc.132,3778,2010.)。
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