昨年度までにオリゴヒスチジンタグ/Ni(II)-NTAプローブペアによるタンパク質共有結合ラベル化法の検討を進め、この手法を応用する事で細胞内に発現させたヒスタグ導入タンパク質がラベル化可能であることを明らかとした。今年度は、この手法を用いて細胞内に発現させてヒスタグ導入タンパク質の蛍光バイオイメージングへに応用を検討した。しかしながら細胞内に残存する蛍光プローブが多いため、ラベル化されたタンパク質を明確に蛍光で検出することは困難であった。そこで本ラベル化法のアプリケーションとして、細胞内でのタンパク質間相互作用を検出する事を試みた。細胞内に発現させた(CH6x2)タグを有するFRBタンパク質を光反応性基を有するプローブ3-2Ni(II)を用いてラベル化した後、ラパマイシン存在下にて照射するとERBとFKBP12タンパク質が光架橋された高分子量のバンドをブロッティング解析において確認することが出来た。この結果は、本ラベル化法のタンパク質解析における分子ツールとしての有用性を示すものである。 タンパク質型の蛍光バイオセンサー開発に有用な新しい蛍光プローブとして水和平衡を有する芳香族トリフルオロアセチル基を有する新たなクマリン型蛍光色素を合成した。この蛍光プローブの分光学的特性について評価を行ったところ、(1)溶媒の組成た種類など周囲の環境に応じてケト型―ケタール型の比率を変化させる事、(2)ケト型およびケタール型でそれぞれ異なる蛍光波長の発光を示す事を明らかとした。現在、この蛍光色素をタンパク質上に導入するため、システインとの反応性基としてマレイミド基を有するプローブの合成を完了しており、今後、この用いたタンパク質のバイオセンサー化への応用が期待出来る。
|