研究概要 |
1.ビナフチル誘導体のブルー相発現機構の解明 ビナフチル誘導体が冷却時のみ幅広い温度範囲でブルー相を発現することを報告した(J.Mater.Chem.,2009,19,5759)。そのメカニズムを明らかにするために、誘導体を合成し、構造-物性相関を調べた。その結果、化合物のらせん誘起力の強弱ではなく、ビナフチル基の不斉軸およびビナフチル基のスペーサーを介して連結した2つの液晶形成基のねじれコンフォメーションがブルー相発現に関与していることがわかった。冷却時にはねじれコンフォメーションが保たれ、ブルー相が発現するが、スメクチック相に転移すると層構造の効率的パッキングのために2つの液晶形成基は平行配列を好む。そこから加熱するとブルー相発現に関与するねじれコンフォメーションを形成できず、キラルネマチック相となる。 2.混合系によるブルー相の安定化 上記の成果をもとにノンキラルビフェニル誘導体を設計・合成し、そこに光学活性なイソソルビド誘導体を添加したところ、キラルドーパントの濃度が13wt%ではアモルファスブルー相III(温度幅25K)を示し、その濃度が7wt%では格子構造を持つキュービックブルー相(温度幅35K)が発現した。さらに濃度10wt%ではBPIIIとキュービックブルー相を示した。 次に、キラルドーパント濃度10wt%の混合物を用い、それぞれのブルー相における電気光学効果を調べた。本研究の対象であるアモルファスブルー相IIIにおいて電圧を徐々に大きくする場合と逆に小さくする場合とで同一電圧の透過率に差がなかった(ヒステリシスフリー)。一方、キュービックブルー相では大きなヒステリシスを生じた。ディスプレイとして用いる場合のアモルファスブルーIII相の優位性が確認できた。
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