研究概要 |
1.ビフェニル誘導体によるブルー相の安定化 新規なビフェニル誘導体を設計・合成し、そこに強いねじり力を持つキラル化合物を加え、その相転移挙動を調べた。キラル化合物を10wt%混合した系の相転移挙動は、Iso 85.4℃ BPIII 70.6℃ cubic BP47.3℃ N*37.3℃ SmX、となった。アモルファスBPIIIとキュービックBPの温度範囲がそれぞれ14.8Kと23.3Kとなった。単一の系で2つのBPがそれぞれ10K以上の温度範囲で発現した。このような系は今まで知られていなかった。そこで、これを用いて2つのBPの電気光学特性を比較した。その結果、我々が対象としているBPIIIは格子構造を持つcubic BPと比べて次のような優位性があることがわかった。(1)電界誘起による透過率にヒステリシスがない、(2)電界無印可時の透過率が低い、(3)しきい電界、飽和電界とも低い、(4)電界に対して安定。これらは、BPIIIが、ディスプレイを開発する上で、コントラストが良好で取り扱いが容易な材料であることを意味している。(J.Mater.Chem.,2011,21,19132) 2.ヒステリシスがなく、室温で応答時間1ms以下の実用的なBPIII材料の開発 添加することでブルー相の温度範囲を広げ、良好な光学特性を誘起するBP安定化材料を設計した。この化合物を汎用のネマチック液晶組成物に添加し、そこにキラル化合物を混合したBP材料を開発した。この材料は室温でBPIIIを発現し、電界誘起による透過率にヒステリシスが無く、応答時間が1ms以下であった。また、1ヶ月保存後もその電気光学特性に変化はなかった。実用材料を開発する上で有用な設計指針が得られた。(Appl.Phys.Express,2011,4,101701)
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