ペンダントグループに半導体としての性質を示すターチオフェンを導入した側鎖型液晶性ポリシロキサンを合成をした。Time-of-Flight法によるキャリア移動度測定の結果より、この高分子が室温で良好なホール輸送性を示し、ホール移動度が1×10^<-2>cm^2/Vsに達することが明らかとなった。次いで、ポリシロキサン鎖のアルキレン鎖による架橋を検討した。1atm%のSiH結合が残留した液晶性ポリシロキサン薄膜を、デカジエン、および、カルステッド触媒を溶解したトルエン中に浸し、加熱したところ、薄膜の硬化が認められた。架橋反応が進行したものと考えられる。しかし、得られた薄膜は柔軟性に乏しく、延伸することはできなかった。 より柔軟な液晶材料を得るため、半導体として機能するπ電子共役系に、複数のオリゴシロキサン鎖を導入した液晶材料の合成を検討した。ペリレンテトラカルボン酸ジイミドに複数のオリゴシロキサン側鎖を導入したところ、室温でカラムナー相を示すn-型の液晶性半導体が得られた。この液晶材料はヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、THFなどの有機溶媒に対して良好な溶解性を示し、スピンコートによる薄膜作製が可能であった。また、Time-of-Flight法によって電子移動度を測定したところ、室温で、10^<-3>cm^2/Vsを超える値を示した。この液晶材料は室温で柔軟な液晶状態を示すことから、架橋することにより伸縮可能な薄膜を作製することが可能であると期待される。液晶性半導体の柔軟性を検討するため、高分子基板の上に薄膜トランジスターを作成し、変形の際の特性の変化を調べた。3%の歪がかかっても、薄膜トランジスターは動作し、液晶性半導体が結晶性材料に比べて柔軟性に富んでいることが立証された。
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