本研究課題では、ペリレンテトラカルボン酸ビスイミド(PTCBI)をベースとした液晶性半導体の合成を検討した。 4本のアルケニル基を導入したPTCBI誘導体を合成し、その側鎖末端に、Karsted触媒を用いたヒドロシリル化により、オリゴシロキサン鎖を導入した化合物を合成した。これらの化合物は、室温でカラムナー相を示し、-100℃まで冷却しても、結晶化しなかった。また、液晶相で良好な電子輸送性を示し、特に、ジシロキサン鎖を導入した化合物においては、室温での電子移動度は、最大で0.1 cm2/Vsに達した。電子移動度は0℃から50℃の間では、温度に依存しなかった。この化合物のシクロヘキサン溶液を、テフロン繊維を摩擦転写したガラス基板上にスピンコートすることにより、カラムが一軸配向した液晶性薄膜を作成することができた。 さらに、側鎖末端に重合性の官能基である環状のヘプタメチルシクロテトラシロキサンを導入したPTCBI誘導体を合成した。環状シロキサン部位は非常に嵩高いにもかかわらず、一部の化合物は室温でカラムナー相を示した。PTCBI部位と環状シロキサン部位をブチレン鎖でつないだ化合物は、室温では結晶であり、等方相から急冷するとガラス化した。しかし、へキシレン鎖でつないだ化合物は83℃以下でヘキサゴナルカラムナー相を示し、室温以下まで冷却しても、液晶相を保持した。室温では、電子輸送性を示し、電子移動度は1.2x10-4 cm2/Vsであった。 この化合物は有機溶媒に対して高い溶解性を示し、スピンコート法による薄膜作製が可能である。また、トリフルオロメタンスルフォン酸を添加して過熱することにより、重合することができた。柔軟で収縮可能な電子輸送性の液晶性高分子薄膜を作成するため、現在、重合条件を検討している。
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