研究課題/領域番号 |
22350082
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
堀田 収 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00360743)
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研究分担者 |
山雄 健史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10397606)
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キーワード | 結晶成長 / 高性能レーザー / 電子・電気材料 / 光物性 / 分子性固体 / ナノインプリント / 発光トランジスタ / 交流ゲート電圧法 |
研究概要 |
1発光トランジスタデバイスの発光効率の向上 従来の発光トランジスタは、駆動電圧が高く、発光効率が低いという難点があった。この課題を克服するために、以下の方策を採用した:p型およびn型有機半導体結晶を積層した発光層をもつデバイスを作製し、p型またはn型単層結晶からなるデバイスに比べて、10~100倍の発光強度を示すことを確認した。p型およびn型結晶の双方が発光した。このデバイスにおいて、研究代表者および研究分担者が独自に開発した交流ゲート電圧法が効果の高いことを併せて確認した。有機半導体として、チオフェン環とフェニレン(ベンゼン)環からなり(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーと称する複合オリゴマーを用いた。コオリゴマー分子の両末端を化学修飾してp型およびn型半導体とした。これらの成果は、発光トランジスタを効率よく、かつ安定駆動させる上で重要性が高い。研究成果を材料系の一流誌に公表し、国内外から注目を集めている。 2回折格子を用いた発光トランジスタデバイスからの狭線化発光 ナノインプリント法でフォトニック結晶ライクな2次元回折格子を形成したデバイス基板に、上述の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーからなるp型およびn型のスラブ結晶を貼付け積層して発光トランジスタデバイスとした。このデバイスのゲート電極に交流電圧(振幅:100V、周波数:50kHzの矩形波)を印加して、548nm付近の波長領域に強度の大きい狭線化発光(半波高全幅値:~4nm)を観測した。このとき、ソース電極とドレイン電極には、それぞれ-90Vおよび90Vの直流電圧を印加した。これらの成果を学術誌に投稿した。本研究以外で発光トランジスタからの狭線化発光はこれまでに観測例がなく、電流注入有機レーザーの実現に向けて有力なデバイス構造およびその駆動法を提示できたところに本研究の意義と重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発光トランジスタの高発光強度化と狭線化とを共に達成できた。特に、後者の狭線化発光は本研究以外には報告例がなく、本研究の優位性に訴求できたと考える。さらに、p型およびn型の有機半導体の積層が高強度の発光を安定に持続させる上で優れることを見出した点も意義が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
デバイスへの共振器の配備方法とダブルヘテロ構造の最適化に取り組む。前者では、基板への共振器の作り込みとオリゴマー半導体結晶への共振器の直接の作り込み(分布帰還型)の双方を実施する。後者の構造最適化に関連して、オリゴマー結晶と金属(ソース、ドレイン)電極との間に有機半導体薄膜を挿入することがキャリア閉じ込めと光閉じ込めの双方に対して有効であることを既に見出している。これらのアプローチによって斬新なデバイス構造を開拓し、目標達成につなげる。これらを通して、有機デバイス分野においてオリゴマー結晶を用いた半導体レーザーの地歩を確立する。
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