研究概要 |
昨年度無置換ペンタセンのαジケトン前駆体を用いて光変換前駆体法によるペンタセンFETデバイス作製法を確立し、溶液プロセスと光反応によりアモルファスシリコンに匹敵するFET特性を得ることに成功した。今年度は光変換前駆体法を用いた薄膜結晶構造制御を行うために次の研究を行った。 1. 溶液塗布法による薄膜構造制御と置換基の相関関係を検討するために、新規テトラアルキルペンタセンのジケトン前駆体を合成し、溶液、薄膜、結晶中での光変換反応と構造制御について検討した。その結果2,3,9,10-テトラエチルペンタセンの溶解度が無置換ペンタセンにくらべ大きく向上するとともに結晶性は著しく低下した。その結果、薄膜中での光変換においては、無置換ペンタセンで観察されたペンタセン結晶の成長がエチル体では観測されなかった。また結晶中の光変換では、ペンタセンで観測された会合体からの発光がエチル体では観測されず、モノマーからの発光のみが観測された(Submitted)。 2.2,6-チエニルアントラセン及びそのヘキシル体のジケトン前駆体を合成し、光変換反応を利用した溶液プロセスによるFETの作製とその性能における置換基効果を検討した。TRMC法によりどちらの化合物から作製した薄膜も、有機半導体材料としてのポテンシャルを有していることがわかった。特に無置換体では蒸着法に匹敵するFET特性が観測された (Chem. Commun.2012, 48, 11136-11138)。 3.これら材料を利用したp/n積層型有機薄膜太陽電池やバルクヘテロ型太陽電池の作製を行った。結晶性が高い無置換ペンタセンは、バルクへテロ構造よりもp/n接合型太陽電池のp型材料としてより優れていることが分かった(Solar Energy Materials and Solar Cells, 2013, in press)。
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