研究課題
本研究では、溶液プロセスで成膜可能な単一の有機半導体でありながら、加熱処理などによって電荷輸送特性の電荷タイプ(p型、n型、両極性型)を変換できるチエノキノイド化合物QQT(CN)4について研究しています。本年度は、pn変換の機構解明に加えて、簡便な溶液プロセスで針状単結晶のトランジスタを開発に取り組みました。QQT(CN)4のクロロホルム溶液をキャストし、ゆっくり揮発させることで、自発的に針状単結晶ができることが分かりました。それをヘキサンに分散させてSi基板に滴下することでトランジスタを作製しました。その結果、溶液プロセスによる1次元的結晶では最高となる両極性型の電荷移動度(ホール:0.4 cm2/Vs、電子:0.5 cm2/Vs)が得られました。単結晶の電子線回折を測定し、分子の配列方向を解析しました。加えて、量子化学計算により軌道間相互作用などを求めました。その結果、針状結晶の長軸方向には、良好な電荷移動経路があることが分かりました。また、分子数の増加に伴う移動積分の変化を検討した結果、分子が無限に連なった場合でも、QQT(CN)4が両極性型の電荷輸送特性を本質的に有することが明らかになりました。このように、軌道間相互作用と結晶構造との関係から、QQT(CN)4単結晶中の方位と電荷輸送特性について検討することができ、構造物性相関に関わる知見が得られました。QQT(CN)4のスピンコート膜をラビングしたところ、分子配向膜が得られました。分子長軸がラビング方向に平行に配列し、2色比は4.6に達しました。X線回折による解析結果から、ラビングにより分子の会合状態は乱れるものの、側鎖を介して積み重なっている配列構造は保たれたままに、格子面が回転していることが分かりました。QQT(CN)4が高いフレキシビリティ性を有しているために、直接のラビングにより分子配向膜が得られたと考えられます。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chem. Commun.
巻: 51 ページ: 5836-5839
DOI: 10.1039/c4cc09608h
RSC Adv.
巻: 4 ページ: 36729-36737
DOI: 10.1039/c4ra04964k