研究概要 |
有機エレクトロニクス材料の分野で注目されている9,9'-スピロビフルオレン構造に着目し、今年度は、その一つのベンゼン環をイミダゾールに置換した構造分子の合成法を確立し、励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)を利用して、補色二色発光による単分子白色発光材料の創製を目指した。得られた主な成果は下記の通りである。 橙色発光部位としてESIPTを起こし得る色素、3-(1,4,5-triphenyl)-1H-imidazol-2-yl]naphthalen-2-o1を利用し、青色発光を示す共役構造2,7-diaryl-9H-fluoreneを9,9'位スピロ構造で連結した分子を合成した。発光色を精密にチューニングできるよう、2,7-dibromo-9H-fluoren-9-oneを用い、クロスカップリング反応により、各種アリール基を導入した分子を合成した。合成したスピロ構造体は、溶液中青色発光を誘起する励起波長365nmで励起することにより390-410nmの青色発光に加え、ESIPTによる560-600nmの橙色発光を示し、その結果白色発光を実現できることがわかった(CIE色度座標で(0.39,0.34))。また、PMMAフィルムを作成し各種発光色を調べた結果、固体分散状態においても白色に極めて近い発光(CIE色度座標で(0.30,0.28))を示すことが明らかとなった。さらに、合成したスピロ構造体の発光に関与するπ分子軌道の解析を理論計算(DFT)により行い、発光に及ぼすスピロ構造の影響を明らかにした。
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