研究概要 |
効率的合成法の開発と分光法およびDFT計算を駆使して、有機単分子による白色発光を実現した。今年度は、単分子白色発光有機材料の創製を目指し、励起状態プロトン移動(ESIPT)により長波長発光する部分(ヒドロキシナフチルイミダゾール)と短波長発光する部分(2,7-二置換フルオレン)をスピロ結合で連結した分子を設計・合成した。 イミダゾールの1位窒素原子上へのアリール基の導入には、銅触媒とアリールボロン酸によるカップリング反応を、フルオレン2,7-位への共役分子の導入には、パラジウム触媒と有機スズ反応剤によるクロスカップリング反応をそれぞれ応用し、反応条件の検討を含めて効率の良い合成ルートを確立した。イミダゾール部分とフルオレン部分は、トリフルオロメタンスルホン酸による分子内フリーデル・クラフツ型の反応により連結しスピロ構造を構築した。 合成した各種置換様式のスピロ分子の紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光発光スペクトルを測定し、CIE色度ダイアグラムも用いて最も効率の良い補色二色発光の条件を絞り込んだ。合成した分子の白色発光の調査において、理想的な白色発光には、次の相関があることが明らかになった。ESIPTをつかさどるイミダゾールの1位N上に電子求引性アリール基がある場合は、短波長発光をつかさどるフルオレンの2,7位に2-メチルチオフェンを導入する。一方、イミダゾールの同N上に電子供与性アリール基がある場合は、フルオレンの同一位置に2-フェニルエチニルチオフェンを導入すれば、理想的な白色発光が実現できることがわかった。このように、単一波長励起による短波長と長波長(補色関係)の同時蛍光発光が可能となり、高輝度の白色発光が実現できた。我々は、これまでにスピロ化合物の優れた熱安定性を明らかにしていることから、合成したスピロ化合物を用いたデバイスを作成し、有機ELへの応用も調査中である。
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