研究概要 |
本研究においては、A1-Niについて層状複水酸化物が生成することを見出した。A1はフッ素錯体の生成定数が大きく、安定な錯体を生成する一方、Bよりも生成定数が小さいことから、本来生成物からは排除されるべきフッ素消費剤であるにもかかわらず、析出すべきNiイオン種とともに主骨格に入りうると考えられる。このことから、フッ素消費剤は反応後の不純物として残存することから、その除去が必要となる場合がある。金属フッ化物錯体溶液により安定なフッ素錯体を形成する金属種を用いて、フッ素消費剤とドープ剤とを兼ねさせ金属イオンの複合化を図ることが出来ることを明らかにしてきた。ここでは、金属フッ化物錯体の安定度を相対的に比較し、金属酸化物合成における複合化の可能性について検討を行った結果について報告する。 金属フッ化物の錯体形成についてはNaF水溶液にMn^<2+>, Fe^<3+>, Co^<2+>, Ni^<2+>, Cu^<2+>を含有する硝酸塩水溶液を所定量添加し、遊離Fイオン濃度をイオンクロマトにより測定した。さらに、pH(NH_3)_4TiF_6溶液に各種硝酸塩溶液を添加し、Fe^<3+>イオンによるTiF_6^-イオンの平衡について検討を行った。NaF中にFe3+濃度が5-30mMとなるようFe(NO_3)_3水溶液を添加し、42時間後までにHPLC測定を行った。遊離フッ素イオン濃度はFe^<3+>の添加とともに減少した。同様に、他のイオンに関しても測定を行ったところ、金属フッ化物錯体の安定度定数に依存する形でFが消費されることから、添加した各イオンの濃度に対する遊離フッ素量の減少について検討したところ、遊離フッ素量はフッ素錯体の安定度定数の上昇にともない、その減少の程度が大きく見られ、このことがフッ素消費反応に対して寄与することを示唆する結果を得た。さらにこれらの反応はいずれも40時間程度を経過した溶液で見られる錯化反応であり、LPDの反応溶液の調整時におけるフッ素錯体形成に当たっては、40時間程度のエージングが必要であることが示唆された。また、この手法を応用し、SiO2からなるMCM-41上にTiO_2を生成する手法を見出し、ナノ構造を有する材料に対する表面修飾法として固体をフッ素消費剤として用いることが可能であることを示唆する結果を得た。
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