本研究ではNiフッ化物錯体による加水分解平衡反応について検討し、Ni-Al系層状複水酸化物(LDH)の合成条件の最適化を図り、さらに得られたLDHの陰イオン交換能に対する溶液pH及びNi/Al比依存性とその際の構造変化について検討した。 各Niフルオロ錯体水溶液の可視吸収スペクトル測定結果から、アンモニア濃度増加に伴い、Niアンミン錯体に帰属される吸収帯が生じたことを見出した。また液体クロマトグラフによる各Niフッ化物錯体水溶液中の遊離フッ素イオン濃度はアンモニア濃度増加に伴い遊離フッ素濃度が上昇し、[NH3]/[Ni2+] = 23.3以上となると急激に遊離フッ素濃度が上昇することがわかった。Niに配位したF-がNH3もしくはOH-に置換されたことを示している。また各Niフルオロ錯体を用いてLPD反応を行い作製した試料のNi2+析出量及びXRD測定結果から、従来考えられていた[NiF6]4-ではなく、化学的に不安定な錯体構造をとる[NiF6-x-y(NH3)x(OH)y]n+をLPD反応の出発物質として用いることにより、非常に効率の良いNi-Al LDH合成を行うことが可能であることを明らかにした。 さらに各pHのCl-溶液中における陰イオン交換率( OH-→Cl- )から、Cl-溶液が酸性である場合、非常に陰イオン交換率が高いことを見出した。これは、OH--LDH層間中に存在するOH-とCl-溶液中のH+が中和反応を起こし、H2Oを生成した為Cl-がNi-Al LDH層間中に可逆的に取り込まれた。以上の結果より、LPD法による高効率なNi-Al LDH合成条件を確立した。
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