研究課題/領域番号 |
22350095
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 則雄 九州大学, 産学連携センター, 教授 (70128099)
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キーワード | 安定化ジルコニア / 固体電解質 / ガスセンサ / 混成電位 / 環境汚染ガス / 固体電気化学 / 揮発性有機化合物 / 炭化水素 |
研究概要 |
近年、自動車や種々の産業プロセスから排出される大気汚染物質による大気環境悪化は深刻であり、環境物質を高感度、高選択的に検出可能な低コストで小型の高性能ガスセンサの開発が切望されている。そのため、本研究では、混成電位や限界電流などを応答信号とする固体電気化学式ガスセンサにおける最適な検知極材料および組成の探索、反応界面の微細構造や微細組成の設計、および作動条件の最適化を目指すものであり、本年度は以下のような成果を得た。 1)種々の単独酸化物を検知極に用いた混成電位型ジルコニアセンサのガス応答特性について検討したところ、酸化スズを検知極に用いた素子を600℃で作動させた場合に、水素およびプロペンに対して高い感度を示すことがわかった。そこで、本素子と炭化水素に対してのみ選択的な応答を示すチタン酸ニッケル検知極とを組み合わせた素子を作製して両極間の電位差を測定することで、プロペンに対する応答を相殺して、水素を高感度かつ高選択的に検知できることがわかった。 2)新規に提案したマンガン系酸化物を固体参照極に用いたセンサ素子のガス応答特性について検討した。その結果、酸化インジウムを検知極に用いた電流検出式センサは、550℃において二酸化窒素を高感度かつ選択的に検知でき、亜クロム酸ニッケルを30wt.%添加した酸化クロムを検知極に用いた電位検出式センサでは、同作動条件下で炭化水素を選択的に検知できることがわかった。 3)酸化ニッケルを検知極に用いた混成電位型センサは、作動温度450℃において50ppbの極低濃度のトルエンを比較的高感度に検知できることをこれまでに見出していたが、本素子はエタノールガスによる干渉を大きく受けることがわかった。そこで、エタノールガスの干渉を除去するために、酸化スズ粉末を充填した酸化セルをセンサ素子の上流に設置することで、トルエン感度を大きく低下させずに、エタノール感度を大幅に低減できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、検知極材料の系統的な探索や作動条件の最適化により、固体電気化学式ガスセンサにおける気相触媒反応界面および検知極/固体電解質の電気化学反応界面での各触媒活性を制御することができ、自動車や種々の産業プロセスから排出される大気汚染物質として選択した二酸化窒素、水素、炭化水素、トルエン等を高感度、高選択的に検知可能な混成電位型ジルコニアセンサの試作に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
作製した固体電気化学式ガスセンサのガス応答特性の高性能化を目指して、検知極層や触媒層の積層状態、厚さ、モルフォロジ、多孔度、組成、複合化度などについて検討を加え、種々のガスに対する応答特性について検討する。また、検知極材料およびセンサ作動条件を最適化した固体電気化学式ガスセンサについて、形状観察や組成分析を行うとともに、ガス吸着特性、気相酸化反応活性、複素インピーダンス特性などを測定、評価するとともに、センシング材料と被検ガス分子との相互作用についてのシミュレーションなどを行うことにより、特異的ガスセンシング機能発現のメカニズムについて考察する。
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