研究概要 |
自然界にはグリコーゲンなどを代表例として多くの分岐多糖が存在しており、その分岐構造の違いがそれらの機能発現に大きく関与している。これまでに我々はこのような分岐多糖を模倣した多糖合成について、1,6-アンヒドロ糖のカチオン開環マルチブランチング重合が有用であることを報告している。得られた多糖は多くの分岐構造を有するハイパーブランチポリマーで有り、その特異的な構造から高水溶性や低粘性を有している。本報告では、1,6-アンヒドロ-D-ヘキソフラノース(1-3)と1,6-アンヒドローD-ヘキソピラノース(4-6)から得られたハイパーブランチ多糖の化学構造と粘度の関係について報告する。 1,6-アンヒドロ-D-ヘキソフラノース(1-3)と1,6-アンヒドロ-D-ヘキソピラノース(4-6)の重合はアルゴン雰囲気下、熱カチオン触媒を用い、プロピレンカーボネート中で行った。20分後、重合物を大量のメタノールに注いだ後、不溶物を水とメタノールを用いた再沈殿により生成多糖を得た。粘度測定には分取SECにより分子量分画したハイパーブランチ多糖を使用した。 1,6-アンヒドロ-β-D-グルコフラノース(1)と1,6-アンヒドロ-β-D-マンノフラノース(2)の重合は不均一で、その他の1,6-アンヒドロ糖(1,6-アンヒドロ-α-D-ガラクトフラノース(3)、1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノース(4)、1,6-アンヒドロ-β-D-マンノピラノース(5)、1,6-アンヒドロ-β-D-ガラクトピラノース(6))の重合は均一で進行し、それぞれ白色の生成物を得た。この重合は主にアンヒドロ糖の開環による成長反応と水酸基からのプロトン移動を伴った連鎖移動反応によって進行し、重合条件により重量平均分子量が4×10^3から6×10^5程度のハイパーブランチ多糖を与えた。 生成多糖の固有粘度は非常に低く、4.9-7.4mL・g^<-1>であった。また、Mark-Houwink-Sakuradaプロットの係数aも非常に小さく、0.20-0.33であった。さらに、40wt%水溶液の定常流粘度測定の結果、生成多糖は高分子量体であるにも関わらず、ニュートン性流体として振る舞い、0.03-0.08Pa・sの値を示した。
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