研究課題/領域番号 |
22350098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
雨宮 慶幸 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70151131)
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研究分担者 |
篠原 佑也 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (60451861)
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キーワード | 異常小角X線散乱 / ゴム / イオウ分散状態 |
研究概要 |
イオウ加硫ゴムは高分子鎖がイオウによって架橋されたネットワーク構造を示し、それがゴムの物性に大きく寄与している。ゴム中でのイオウ分散状態を解明することは極めて重要であるが、未解明な部分が多い。そこで本研究はイオウκ吸収端での異常小角X線散乱法を確立し、それをゴム材料に適用してゴム中でのイオウに起因する散乱を特異的に抽出し、ゴム中でのイオウ分散状態に関する知見を得ることを目的としている。 異常小角X線散乱測定では、異なるエネルギーの入射X線に対する小角散乱強度の微少な変化を高精度に測定することが要求される。前年度に光学系の性能向上・新規検出器の導入を実施し高精度化を実施したが、さらなる高精度化を果たすために、光子計数型の2次元検出器を導入し、検出器起因のノイズによる測定データの質の低下を防ぐことに成功した。一方で、試料中のマイクロメートルオーダーの不均一性が当初に想定したよりも散乱強度に及ぼす影響が大きいことが明らかになった。入射X線のエネルギーを変更した際に試料上でのビーム位置が変化しなければ、上述の課題は生じないが、現状ではかなり低減されたもののエネルギー変更時のビーム位置変動が不可避である。そこでこの問題を解決するために、試料部に自動ステージを導入し、実効的に試料の不均一性が影響しない実験系を設計した。この実験系は平成24年度の放射光実験で実際に利用して有効性を確認する。 上記の課題解決と並行して、ゴム試料の異常小角X線散乱の解釈に関する検討を進めた。その結果、従来の異常小角X線散乱の枠組みでは構造モデルを構築するのが容易ではないことが明確になった。そこで次年度にはシミュレーションと組み合わせた解析法の構築法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試料の不均一性が散乱データの解釈に及ぼす影響が、当初想定していたよりも大きかった。また年度前半の放射光実験においては透過X線強度モニターとして用いていたフォトダイオードが故障してしまい、有用なデータの測定を実施することができなかった。これらの課題の解決に時間をかけたために、当初予定していた実試料の構造解析には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前項で課題として挙げた試料の不均一性が散乱データ解釈に及ぼす影響については、解決法を見いだしている。今後はこれらの知見を有効に活用し、散乱データ測定のさらなる高度化を進めつつ、解析手法の開発・高度化を進め、実試料の構造解析を実施していく。
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