研究課題
低密度高分子材料は水上浮遊体、衝撃緩衝材、断熱材、軽量構造材などの用途に長い歴史を持つ。従来は発泡法により製造され、空隙のサイズは10ミクロン程度であったが、凍結脱気法やエアロゲル法の導入により100nmのレベルまで微細化されている。特にエアロゲル法は、高分子ゲルの溶媒を超臨界流体を経由させて乾燥、除去させる方法であり、ほとんど乾燥時に収縮が起こらず、ゲルの微細構造に対応した空隙構造を得ることが可能である。それに伴い、可視光が散乱されなくなり、「透明低密度材料」が実現している。これを光学材料として利用することが本研究の目的である。高比表面積なナノ構造を有するにもかかわらず、固体バルクのようにセンチメートル以上の一枚板で扱うことができるため、懸濁液や粉体のような流体へ分散させずに利用できる。また可視光波長よりも十分小さいため、光散乱も起こらない。こうした特徴を光学材料に展開させる。本年度は、高強度レーザーの標的として用いるために、重水素化スチレンを更に水素化させ、それを低密度化させたり、低密度酸化スズを高分子をもちいて合成して、レーザー標的として用い、13.5nmの発光の高効率化を実証した。(J.Macromol.Sci.Part B Phys.)また、低密度高分子に担持するための、新規有機半導体p-nナノ粒子をフタロシアニンとフラーレンから合成し、それが光触媒として機能することを始めて示した。(ACS Appl.Mater.Interfaces)。またフタロシアニンの中心金属を変えることにより、D-A構造を有するナノ粒子を得ることができた。この可視光光触媒機能も明らかにした。(Transactions of the Materials Research Society of Japan)
2: おおむね順調に進展している
低密度材料の透明化については、論文投稿の段階である。これと組み合わせる新型の有機半導体光触媒ナノ粒子の合成を2例報告したほか、この組み合わせについても、順調に実験が進んでいる。さらに、新たな透明低密度材料の薄膜化も進んでいる。
研究計画通りに、本研究課題に基づいて進めている透明低密度高分子膜と蛍光物質や光触媒機能を有する分子、粒子を担持させ、その光学特性を報告する予定である。
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ACS Appl.Mater.Interfaces
巻: 3(6) ページ: 1902-1909
J.Macromol.Sci.Part B Phys.
巻: 50(9) ページ: 1761-1770
Transactions of the Materials Research Society of Japan
巻: 36[2] ページ: 177-181