低密度高分子材料は水上浮遊体、衝撃緩衝材、断熱材、軽量構造材なその用途に長い歴史を持つ。従来は発泡法により製造され、空隙のサイズは10ミクロン程度であったが、凍結脱気法やエアロゲル法の導入により100 nmのレベルまで微細化されている。特にエアロゲル法は、高分子ゲルの溶媒を超臨界流体を経由させて乾燥、除去させる方法であり、ほとんど乾燥時に収縮が起こらず、ゲルの微細構造に対応した空隙構造を得ることが可能である。それに伴い、可視光が散乱されなくなり、「透明低密度材料」が実現している。有機高分子エアロゲルは、シリカ等の無機エアロゲルの例に比べれば多くないが、レゾルシノール-ホルムアルデヒド重合物(RF)に端を発し、焼成による炭素化を含めた形で研究が進められている。本研究によって、そのサイズを10nm程度にまで微細化することに成功した。その支配因子について、エアロゲル前駆体のゲル化過程に着目して、動的光散乱測定、NMRによる拡散速度の見積もりを行い、溶媒と高分子との相互作用の強さを変えることが、キープロセスであることを明らかにした。 また、芳香族を有さないことからより短波長の透明化が期待され、同時に未利用の天然資源であるキチンについても以上の知見にもとづいて透明エアロゲル化を行った。 一方で光学材料化に関しては、おもに有機半導体p-n接合体の光触媒化とその透明高分子材料への担持について進めた。金属フタロシアニンをp型半導体として、フラーレンをn型半導体として取り上げ、この複合ナノ粒子を合成し、有機アミン、アミド、アルデヒド、チオールといった揮発性有機物の二酸化炭素への無機化分解を実証した。またその機構を光電気化学特性と関連づけて考察し、p-n接合が本質的な役割を果たしていることを示した。これらの有機半導体の高分子担持についても例を示した。
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