研究課題/領域番号 |
22350102
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山口 政之 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (40401947)
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キーワード | ナノコンポジット / カーボンナノチューブ / ナノファイバー / レオロジー / 導電性高分子 / ポリマーブレンド / ブラウン運動 / 拡散 |
研究概要 |
直径が1μm以下の繊維は、高分子液体中において顕著なブラウン運動を示す。本現象はカーボンブラック(CB)や気相成長炭素繊維(VGCF)で報告されている他、我々もアスペクト比の大きなCNT(Carbon Nanotube)でこれまでに確認している。また、非相溶ポリマーブレンドに微粒子が分散した系では、各ポリマー(相)との混和性に応じてその偏在状態が決定することは知られている通りであり、我々もゴムブレンド系においてCBが偏在する現象を報告している。これら二つの現象に着目し、本研究開始までに非相溶ポリマー界面をナノファイバーが横切って移動する現象を初めて明らかにしている。昨年度までに、CNTが示すブラウン運動を材料全体のレオロジー特性の変化を調べることで、異種高分子間の移行現象を定量的に表現できることが判明している。今年度はこれらの知見をフレキシブルなナノファイバー分散系に応用した。その結果、フレキシブルなナノファイバーの相間移行現象は剛直繊維に比べて生じにくいことが判明した。フレキシブルファイバー間のトポロジー的な相互作用に起因すると考えられる。それでも繊維長が短い場合には相間移行を確認することができる。本現象を利用し、定量化が難しいほどのごく少量の撥水性繊維を表面に偏在化させた超撥水高分子材料を汎用高分子で得ることに成功している。さらに、フレキシブルナノファイバーのトポロジカルな相互作用を利用すると、伸長流動場における粘度のひずみ硬化性が顕著に観察されることが判明した。本現象を利用することで、ポリプロピレンなどこれまで発泡成形を行うことが困難であった材料の発泡成形性を飛躍的に向上することができた。 次年度以降は、本知見を基に材料開発への応用をさらに進め、ポリマーブレンド中におけるナノ繊維の局在化、フレキシブルナノファイバーによるレオロジー改質を活かした特殊な成形加工への応用を試み、実用化可能な技術としての確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標であったフレキシブルナノファイバーによる相間移行現象の確認とそれによる超撥水性材料の設計に成功したばかりでなく、本系の示す特殊なレオロジー特性に着目し、これを市場ニーズの極めて高いポリプロピレンの発泡成形に応用することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、すぐにでも実用化を目指すことが十分に期待できる内容である。これまでに得られた成果を国内の学会などを通じて産業界にアピールし、技術移転を図る。また、そのために、本技術の応用例を数多く示すための検討を積極的に取り入れる。また、技術の更なる深化を目的とし、ナノファイバーをポリマーブレンド中で局在化させ、新規機能の創出を図る。
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