これまで我々は、ポリマー溶融体中に分散した直径 1ミクロン以下のナノファイバーが活発なブラウン運動を示すことを明らかにしてきた。さらに、ナノファイバーが非相溶ポリマー間を移動する現象を見出した。本現象を利用するとナノファイバーの表面局在化が可能であり、種々の表面機能を自在に付与した新規材料への展開が期待できる。 本研究では、まず柔軟性の異なるさまざまなナノファーバーが分散したポリマー液体のレオロジー特性を検討した。柔軟なナノファイバーは繊維間の相互作用が特に強く、ごく少量の添加でも伸長粘度にひずみ硬化性が現れることを初めて明らかにした。伸長粘度のひずみ硬化性は発泡成形などの比較的難しい成形加工方法に必要不可欠なレオロジー特性であり、工業的に極めて有効な知見となる。 さらに、ポリマーブレンド中のナノファイバーの局在化を検討し、混和性の違いが偏在量を決定づけていることを解明した。本特徴を利用することで、高分子表面にナノファイバーを局在化させることが可能になる。カーボンナノチューブの表面局在化、超撥水性ナノファイバーの植毛、分離膜へ応用可能な多孔質フィルムの創製など本研究の応用範囲は広く、新しい科学技術領域としての確立が期待される。
|