研究課題/領域番号 |
22350103
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大川 浩作 信州大学, 繊維学部, 准教授 (60291390)
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キーワード | 接着性ペプチド / コンジュゲート分子合成 / セルロース誘導体 / キトサン誘導体 / エレクトロスピニング / 超微細繊維材料 / ナノファイバー / 硬組織工学材料 |
研究概要 |
平成23年度の実績では、昨年度のコンジュゲート分子合成とは異なるアプローチによる微細繊維材料創出のための知見が得られた。セルロースおよびキトサン等の天然多糖、または、ヒドロキシプロピルセルロース等の修飾多糖溶液をエレクトロスピニングして作成した微細繊維不織布を化学修飾し、保護アミノ酸およびペプチド等の接着機能性を持つ分子を微細繊維表面に化学結合により導入することに成功した。この様に作成した接着分子結合微細繊維不織布を適切な酸または塩基性条件下で処理を行い、保護基の除去も可能であることが分かった。このような手法を用いることで、コンジュゲート分子合成を経由せずとも微細繊維不織布の機構化が可能であり、母体高分子として多糖だけでなくタンパク質系高分子も利用可能となった。具体的には、セルロース微細繊維不織布を適量の二官能性試薬を用いて処理し、未反応の片側官能基にアスパラギン酸ジエステルを付加後、アルカリ溶液中に浸漬するとジカルボン酸が再生した。この変換過程によび微細繊維不織布表面は負電荷を帯びるようになった。他の例では、低級アミン化合物を付加することで、正電荷を持つ微細繊維不織布を作成することができた。このよういして得られた荷電表面は、アミノ酸誘導体程度の低分子、ペプチドやポリペプチド程度の比較的大きな分子、さらに、酵素タンパク質級の巨大分子を効率良く吸着できることが明らかになった。上記および関連研究成果は国内外の学協会に発表し、さらに、多糖類としてキトサンおよびセルロースを主とする微細繊維製造方法の特許査定も得られた。平成24年度に実施予定の生体表面と微細繊維材料の相互作用(インターフェーシング)評価のための基礎知見が多数得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり、平成24年度実施予定の研究課題実施のための基礎知見、ならびに、工業所有権は順調に取得できていると判断する。平成23年度に学協会に発表した件数は前年度よりも多数であり、さらに、調査活動成果一部は、2編の書籍として出版した。これらは、生物由来接着物質の利用工学およびエレクトロスピニングを経るセルロースナノファイバー作成法に関する新技術に関するものである。総じて当初計画のとおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、これまでに作成した幾つかの微細繊維材料と生体(組織)表面とのインターフェーシング(相互作用評価)に関する実験を実施する。微細繊維材料として、これまでに、(i)合成コンジュゲート分子を含む複合微細繊維、(ii)繊維タンパク質系天然微細繊維(研究成果欄参照)、および、(iii)化学修飾(機能化)微細繊維の3系統を得ている。これらに加え、評価対象の生体組織の選択も含めると組み合わせは多種多様となる。そこで、最初に培養細胞系を用いるインターフェーシングを実施する計画である。当初計画に基づく候補は骨芽細胞または繊維芽細胞であり、上記(i)-(iii)の微細繊維材料上での培養時における細胞挙動を評価する。次いで、インプラント実験系に展開する予定である。
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