研究課題/領域番号 |
22360004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深津 晋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60199164)
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キーワード | シリコン光増幅器 / {311}欠陥 / 量子細線ロッド電子系 / シリコン発光ダイオード / シリコン導波路 / 光結合 / ポンプ・プローブ法 / 可変長ストライプ励起法 |
研究概要 |
本研究の目的は、シリコン中に自発形成する{311}欠陥量子細線ロッドを制御してシリコン導波路発光ダイオードおよびシリコン光増幅器(Si-SOA)へ進化を模索することである。欠陥の発生方位特異性と量子細線ロッド電子系の非プロッホ性を利用することで、シリコン生来の間接遷移特性の克服を目指す。 本年度は、{311}欠陥導入シリコン導波路の形成に着手する上で導波路の基本設計を行うため、まず外部との光結合を検討じた。電子線描画法とドライエッチングによって作成した5ミクロン幅×5mm長の[110]方位のSOI一次元導波路端面にC,Lバンド光を結合させる予備実験では、レンズドテーパードアフィバの結合効率が高NA対物レンズの効率を凌駕した。それに反してポリイミド空間結合器を設けたサブミクロン導波路への同手法の結合効率は極めて低くとどまった。そこで光閉じ込めよりも光結合を重視してマルチモード導波路を選択することとなった。前年度に確立したアニール導入法を生かすべく、低ダメージのウエットエッチングによる導波路形成を検討したが、側壁モフォロジの確保が未解決の課題として残った。しかし、意外にも直感に反し、表面ラフネスが存在する未研磨端面でも近赤外高Q共振器が得られるとの実験結果を得た。一方、導波路への電極形成法に関しては、従来どおりA1によってオーミック、ショットキー電極が制御性よく形成できることを確認した。 また{311}欠陥の光利得に関して、InSbQDs埋め込みSi構造のポストアニールへの依存性、温度依存性を評価し、シリコン基板にとどまらず広範な歪ヘテロ系でも{311}欠陥が利得を有することを検証するとともに{311}に常時付随的に発生する低エネルギー利得バンドの存在を検証した。これとは別に、当初計画で付加的に提示したW欠陥に関しても高濃度の発生法を適用して光利得を評価したが、ポンプ・プローブ、可変ストライプ励起法のいずれも損失が観測された。これは{311}欠陥の優位性を示す結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、H23年度は専ら{311}欠陥量子細線ロッド電子系を内包した導波路形成の条件出し、および導波路での光学実験に注力する予定であったが、側壁ゆらぎとプロセス処理の最適化に予想外に時間を費やしたため、年度全体の計画に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度では、導波路形成過程で予定外の時間を費やしたが、H24年度の研究遂行に大きな支障は生じないと考えられる。したがって当初の計画どおりに{311}欠陥量子細線ロッド電子系を活性領域にもつSiSOAの電流励起動作の特性向上を目指す。さらに2チップ増幅器構成から1チップ構成への進化を試み、ポンピング条件の最適化によって増幅自然放出光発生と共振器縦モード制御を通じてレーザ発振への足がかりを掴むことを目指す。
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