研究課題/領域番号 |
22360005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾鍋 研太郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (50204227)
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キーワード | 結晶成長 / 半導体物性 / 窒化物半導体 / MOVPE / MBE / III-N半導体 / 立方晶III-N半導体 / 立方晶窒化物半導体 |
研究概要 |
本研究は、六方晶相の混入を高度に抑制した立方晶相III族窒化物半導体薄膜成長を実現し、それにより立方晶III族窒化物半導体薄膜およびヘテロ構造の特徴ある物性および応用上有利な物性を明らかにするとともに、その物性応用としての、発光デバイス、電子デバイスなどの可能性を探求することを目的としている。この目的に沿って、2年目となる平成23年度においては、以下の研究成果を得た。 1.MBE法によるYSZ基板上の立方晶InN薄膜成長において、YSZ(001)基板の異なる微傾斜方位および微傾斜角による六方晶InNの混入形態を明らかにした。【100】方向へ2°傾斜した基板上では、立方晶InNの4個の{111}ファセット面のうち、(111)面と(1-11)面からの六方晶相の混入が顕著であり、微傾斜角度の増加に伴い、(111)面と(1-11)面への六方晶相の混入率が増加し、他のファセット面への混入率が減少する。これらの傾向は、基板の微傾斜角度の増加によって、これらのファセット面上でc軸配向六方晶相の形成がより幾何学的に容易であり安定化するためであると解釈できる。 2.MBE法によるMgO(001)基板上の立方晶AlN薄膜成長において、立方晶GaNバッファー層の表面平坦性の向上による立方晶AINの結晶性および表面平坦性の向上を実現した。従来の550℃成長立方晶GaNバッファー層に代えて、400℃成長低温バッファー層および550℃成長立方晶GaNバッファー層の2段階成長バッファ層上に700℃で立方晶AIN成長を行うことによより、立方晶AIN表面平坦性が顕著に向上した。同時に電子線回折において六方晶回折が消滅し、六方晶の混入が抑制されたことが明らかである。また、室温光透過測定より、バンドギャップエネルギーが5.0~5.5eVであることが明らかとなった。 3,MOVPE法によるGaAs(001)基板上の立方晶GaNおよびInGaN成長においては、GaAsバッファ層および低温成長GaNバッファ層の成長条件を見直して、高相純度立方晶GaN成長条件の最適化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MBE成長立方晶InNおよび立方晶AINにおいて、当初の目的に沿った顕著な進展をみた。MOVPE成長立方晶GaNおよびInGaNにおいては、多少の見直しを行って、今後のさらなる高品質結晶実現を期した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、MBE成長においては、MgO(001)基板上の立方晶AINに集中して、高相純度化および光学特性などの物性解明に注力する。またMOVPE成長においては、GaAs(001)基板上の立方晶GaNの高相純度化および欠陥評価、さらに立方晶InGaNに展開する。またGaAs(311)基板上の高相純度立方晶GaN成長を、パタン基板上の選択成長を含めてさらに推し進める。
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