酸化物半導体として酸化ガリウムに着目し、ミストCVD法による成長を行ったところ、X線回折ロッキングカーブ半値幅が40秒以下の高品質コランダム型結晶がサファイア基板上に成長することがわかった。これを受けコランダム型の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム等との混晶系を着想し、バンドギャップと格子定数の関係を示す図を完成させた。これをもとに材料設計を行い、成長と物性探索を行った結果、以下の結果が得られた。 1.サファイア基板上に成長した酸化ガリウムの詳細な構造解析から、単結晶コランダム型で回転ドメインを含まないことが分かった。また禁制帯幅は5.3eVで、混晶系の基盤材料になりうることが判明した。ただし0.1%程度の斜方晶成分の混入があり、成長条件の最適化によってこれを少なくしてゆく必要性が示唆された。 2.酸化鉄との混晶である酸化鉄ガリウムにおいて、全混晶組成領域においてX線回折ロッキングカーブ半値幅が100秒以下と優れた結晶性を持つ薄膜が得られた。 3.酸化鉄ガリウムは低温から11OKまでの領域で強磁性を示した。これにより、混晶系による多層構造との組み合わせにより新しいタイプのスピントロニクスデバイスにつながることが示唆された。 4.酸化クロム薄膜の成膜を実証し、金属の表面コーティングに利用することで耐腐食性が大きく改善されることが判明した。これは機械応用等への波及効果をもたらすことが期待される。 5.酸化クロムガリウムの成膜を実証し、この成果により酸化鉄ガリウムと相補的な磁気特性を持つ応用展開が今後期待される。
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