研究課題/領域番号 |
22360007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 静雄 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135536)
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キーワード | 酸化ガリウム / コランダム構造 / 混晶 / スピントロニクス / バンドギャップ制御 / ヘテロ構造 / パワーデバイス / ドーピング |
研究概要 |
酸化物半導体としてコランダム型酸化ガリウムと酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化インジウム等との混晶系を提案し、バンドギャップと格子定数の関係を示す図をもとに材料設計を行い、成長と物性探索を行った。得られた結果を以下に示す。 1.酸化ガリウムの物性値を基に応用領域を検討した結果、酸化ガリウムがGaNやSicを上回る絶縁破壊電界を持つ可能性が示唆された。これをもとにパワーデバイスとしての応用が期待されるようになり、その波及効果が大きいことから今後の重要な研究課題ととらえることにした。 2.酸化ガリウム/サファイア界面の透過電子顕微鏡観察を行い、界面で格子緩和が生じ酸化ガリウム成長層内に転位等が伝搬することが抑えられていることが明確になった。そのため良好な結晶性を示すと言える。 3.酸化鉄との混晶である酸化鉄ガリウムにおいて、混晶組成に対する磁気特性を測定し、鉄組成が58%の場合に室温における強磁性を観察しえた。これは将来的にスピントロニクスデバイスへの応用に有望な成果である。 4.酸化ガリウムのパワーデバイス応用を観点に、スズのドーピングにより電気的特性の制御を試みた。アンドープ膜は高抵抗であるが、スズのドーピングにより10^<19>cm^<-3>程度のn型膜が得られた。移動度は2.8cm^2/Vsで、不純物による補償効果に強く影響されていることが分かった。 5.酸化アルミニウムガリウムによりバンドギャップの拡大を目指した。これにより最大バンドギャップ7.4eVが実現され、X線回折ロッキングカーブ半値幅も300秒と良好な結晶性を保っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnO以外の酸化物半導体は過去に研究例がほとんどなく、その意味で新規物性の探索により新規応用分野が展開されるという研究分野である。本研究の意義もそこにある。今回、インパクトのある応用分野としてパワーデバイスが対象になったことは当初の予想を超えるもので、著しい成果であると言える。一方で酸化鉄ガリウムの磁性の起源などがまだ不明確で、一つの理由がドーピングが難しいことである。これらの観点を相補して上記区分と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ガリウムをベースとするパワーデバイスと、酸化鉄ガリウムおよび酸化クロムガリウムの磁性を活かしたスピントロニクスデバイスを二つの新規性の高い出口ととらえて研究を推進する予定である。パワーデバイスについては、酸化ガリウム基板が存在している点も大きなモティベーションであり、GaNやSicで問題視されている基板の問題を軽減できる可能性が高い。また成長温度も600度程度と低くできる。このことからパワーデバイスへの応用を大きな柱として重点的に研究を進めてゆく予定である。その際、電気的にはドーピングが必要である一方、MOSデバイスで必要なゲート絶縁膜としては酸化アルミニウムガリウムが利用できると思われる。これらの点は本年度の研究で見通しを得られたと言える。磁性についてはこれまでキャリアが少ない状態での測定であったことが問題であるとわかり、それがドーピングで克服できると思われるため研究の加速につながる。
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