従来2年間の研究成果をふまえ、新機能性の創成とデバイス応用のインパクトが高い研究対象として、(1)混晶強磁性薄膜(GaInCrFe)2O3および(AlGa)2O3/Ga2O3ヘテロ構造を用いるスピントランジスタ、(2)Ga2O3の伝導性制御とパワーデバイスの研究により、本研究の所期の目的を達することとした。成長にミストCVDを用いることではじめて(GaCrFe)2O3混晶や広い組成範囲にわたる(AlGa)2O3/Ga2O3ヘテロ構造の成長が可能となり、コスト効果に優れて産業応用に直結しうる。成果の概略を以下に示す。 (i) (GaFe)2O3薄膜においてFe組成55%で大きな室温強磁性が得られること、その発現機構がFeの偏析等によらないこと、ドナのドーピングにより磁性が顕著になること、GaとFeの相互作用混晶による磁性であること、それがDzyaloshinskii-Moriya相互作用が支配的と考えられること、など新規物性に関する知見が得られた。 (ii) (InFe)2O3薄膜にドーピングすることで磁性の増大が得られた。Crドーピングでは顕著な効果が得られなかった。 (iii) 欠陥の少ない(GaFe)2O3/Ga2O3ヘテロ接合を形成でき、今後効果的なスピン注入とスピントランジスタにつながりうるとの見通しを得た。 (iv) Ga2O3薄膜へのドナドーピングで10^19cm-3台のキャリア密度を実現し、また欠陥の少ない(AlGa)2O3/Ga2O3ヘテロ構造を形成でき、今後MOSパワーデバイスにつながりうる見通しを得た。 以上の研究成果から、酸化物薄膜の新規な量子複合機能の発現を得て、今後新しいデバイスへの進展が期待される成果が得られた。
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