研究課題/領域番号 |
22360014
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白井 正文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (70221306)
|
研究分担者 |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
|
キーワード | 不揮発性メモリ / 強磁性体 / 強誘電体 / 電気磁気効果 / 磁気異方性 / 電界効果 / 磁気抵抗効果 / 第一原理計算 |
研究概要 |
不揮発性スピンメモリにおいて電界による磁化反転を利用したデータ書換えを確立するために、強磁性金属/酸化物積層薄膜における結晶磁気異方性とその電界効果の第一原理計算を行い、顕著な電界効果を発現する材料・素子構造を理論的に探索した。本年度は、強磁性金属の構成元素および組成の違いに着目し、Fe/MgO界面付近のFeをCoで置換した系を対象として磁気異方性とその電界効果を第一原理計算した。その結果、Fe/MgO界面における強い垂直磁気異方性が、Co組成の増加に伴って著しく低下することを見出した。この結果は、FeとCoの価電子数の違いにより、フェルミ準位付近における電子バンド構造とその軌道成分の変化に起因している。また、磁気異方性の電界変調量についても、Co組成の増加に伴って減少する傾向が得られた。この結果は、MgOとの接合界面における磁気異方性の電界制御のためには、Fe組成の多い強磁性合金を用いる方が有利であることを示唆している。 一方、高スピン偏極ホイスラー合金を用いた磁気トンネル接合における電界アシスト磁化反転の可能性を検討するために、Co_2FeAl/MgO界面における磁気異方性を第一原理計算した。その結果、Co終端界面では強い垂直磁気異方性を発現するのに対して、FeAl終端界面では面内磁気異方性を示すことが明らかになった。磁気トンネル接合界面における磁気異方性は、界面付近における強磁性金属の電子バンド構造に強く依存することを反映して、CoFe/MgO界面とは異なる傾向を示したものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時に研究実施計画の一つとして掲げた強磁性金属/非磁性金属/強磁性金属スピンバルブ構造と強誘電体を接合した系において誘電分極の向きによりスピンバルブの磁化配置を反転させることが極めて困難であることが本年度の検討により明らかになったため。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)強磁性金属/絶縁体積層薄膜における磁気異方性の電界効果の評価については、次年度は絶縁体の候補として非磁性半導体および高誘電率酸化物に対象を拡張して、顕著な電界効果を発現する材料・素子構造を探索する。 (2)強磁性金属/非磁性金属/強磁性金属スピンバルブ構造の磁化配置を、接合した強誘電体の誘電分極の向きにより制御することが困難であることが予想されるため、次年度は強磁性金属/強誘電体積層薄膜における誘電分極の向きによる強磁性転移温度の変調を利用した非破壊読出し技術について検討を進める。
|