原子ステップ/テラス構造を持つシリコン(111)表面に、AFMカンチレバーを用いて微細なインデンテーションを印加することにより、その後につづく低溶存酸素水浸漬によって、三角ピットを表面に形成することに成功した。インデンテーションでは、従来、微小押し込み領域で、弾性変形が数10μNで観測されたことが報告されているが、本実験では、数μNでも十分に、インデンテーションの履歴が観測され、弾性変形に留まらず、シリコン単結晶に対して塑性変形をもたらしていることが明らかとなった。つまり、塑性変形のしきい値応力は極めて低いことを物語っている。今後は、さらに、単原子ステップあるいは所定高さのステップ形成等により、制御性を高めていく。 酸化物単結晶の代表として、y-cutクオーツ面を用いたところ、シリコン同様に、ステップ/テラス構造を作成することに成功した。シリコンに比較して構造は複雑になり、らせん状の三回対称となっている。また、形成されたテラス表面は、極めて安定であり、シリコンに比較して外乱に対して強いことがわかった。また、原子ステップ直線性も得られ、ステップ端への外乱によるキンク発生に対する耐性も、シリコンに比較して、十分高いことが明らかとなった。クォーツは、耐薬品性が強いため、シリコンのSiO2フェンスのような機能を発揮させることが困難であるが、インデンテーションを含めて、ステップ制御方法の探索を進めると同時に、シリコン表面の熱酸化膜との差異等に注目していく。
|