半導体エレクトロニクスに代表されるように、デバイスの高機能化微細化に伴い、界面構造を理解することの重要性が増大している。デバイスの特性は、界面付近の構造に敏感であることはよく知られているが、これまで、界面付近の構造を原子スケールで評価する方法がほとんどなく研究が進展していない。申請者は、これまでX線回折法、とくにCTR(結晶トランケーションロッド)散乱法により、表面・界面、超薄膜の構造を決定してきた。本研究では、構造モデルを立てることなく、CTR散乱の測定データから直接的に表面・界面、超薄膜の構造を原子分解能で求める方法を確立し、その手法を興味ある系に発展的に応用して行くことを目的としている。 本年度は、これまでの準備研究・実績に基づいて以下の研究を行った。まず、超高真空中でSi(111)基板にBi2Te3薄膜をエピタキシャル成長させ、その上にさらにBi超薄膜(14原子層)をエピタキシャル成長させた試料について、本研究の手法を適用し、各原子層を電子密度として再構成することに成功した。その結果、Si基板とBi2Te3薄膜との界面に濡れ層が存在することがモデルフリーに示された。同時に、解析された各原子層の電子数や広がりからBi超薄膜およびBi2Te3薄膜の結晶性、結晶成長機構に関する知見が得られた。また、Bi超薄膜の平均格子定数は、表面垂直方向に3%伸び、表面平行方向に4%伸縮していることが分かり、Bi超薄膜がトポロジカル転移し得るということを構造の観点から実験的に初めて明らかにした。さらに、測定の対象を有機超薄膜に広げた。Bi基板上に成長させたペンタセン超薄膜では、ペンタセンはこれまで知られているバルク相や単結晶相とは異なる分子配向をとることが分かった。
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