研究課題/領域番号 |
22360019
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平山 博之 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (60271582)
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研究分担者 |
青木 悠樹 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (60514271)
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キーワード | 表面・界面物性 / 走査プローブ顕微鏡 / スピントロニクス / 量子干渉 / ラシュバ効果 |
研究概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)におけるdI/dV像観察およびSTSスペクトル計測を用いて、Bi/Ag(111)√<3>x√<3>表面上のPx,Py-軌道由来の大きくスピン分裂した表面バンド電子の量子干渉の可能性に関する研究を行った。この結果、表面バンドはスピン分裂しているにも拘わらず、分裂したバンドの交点以下のエネルギー領域IIにおいて、表面ステップや格子欠陥ライン近傍に量子干渉による電子定在派パターンが現れることを見出した。この結果を分散関係に焼きなおしてプロットすると、スピン分裂した2つのバンドに共通の上に凸なパラボラ形の分散関係がよく再現される。この結果は理論的に予測されていた、ラシュバ効果によってスピン分裂した表面バンドの同一スピン分極バンド内遷移に伴う散乱が確かに許容され、そのために量子干渉が許されていることを実験的に初めて検証する結果となった。 一方2つのスピン分裂したバンドの交点以上のエネルギー領域Iにおいては、こうした量子干渉は見られなかった。しかしSTSスペクトルの解析結果は、このエネルギー領域においても表面バンドはスピン分裂した上に凸のパラボラ的分散関係を持続していることを示している。エネルギー領域Iにおいて量子干渉が見られない理由として、このエネルギー領域においては入射および反射状態に対応する同一のスピン分極バンド状態を見出すことができないため、散乱およびそれにともなう量子干渉はスピンによる抑制により禁止されている可能性についても考察を行った。 さらにAg(111)表面上に蒸着するBi量を、√<3>x√<3>構造が完全に完成する1/3ML以下の範囲で細かく制御し、この時の表面の電子状態をdI/dV像とSTS計測によって詳細に調べる実験を系統的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の2つの大きな目標の中の1つである、Bi/Ag(111)√<3>x√<3>表面のスピン分裂した表面バンド分散を、量子干渉により定量的に評価することに成功した。またこれを受けて、2番目の目標である√<3>構造とその他の構造の界面を形成し、そこでのスピンフィルター効果を検証すべく、Bi量を表面全面に√<3>構造が完成する1/3MLよりも少ない領域での研究を系統的に開始出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
Ag(111)表面全面にBi-induced√<3>構造が完成する1/3MLよりも少ない領域で、Bi量を系統的に変化させながらその構造と電子状態を詳細に調べ、スピン分裂した√<3>構造がスピン分裂しない表面バンドをもつ構造と接する界面におけるスピンフィルター効果を検証する。
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