本計画では、単一スピン・回転状態を選別した三重項酸素分子ビームを開発し、酸素分子/表面相互作用の量子状態依存性を明らかにすることを目的としている。平成22年度は、本研究に必要な速度可変単一量子状態選別三重項酸素分子ビーム源の開発を行った。以下にその内容をまとめる。 1.焦点可変永久磁石型六極磁子システムの開発 状態選別分子線の速度は六極磁子の焦点距離により決定される。電磁石型六極磁子を用いれば速度調整を行うことができるが、装置の大型化と重量化が避けられない。そこで本計画では、長さ可変の永久磁石型六極磁子を開発し、真空外からの操作により速度を数点変化できるシステムを開発する方針を採用している。新ビーム源設計の予備実験として、直線上に並べた永久磁石型六極磁子ユニット5個の2ユニットを真空外から直進導入機構により抜き差しできる機構を試作した。そして六極磁子の有効長と組み合わせを変えることにより、分子線の速度を4通り変化出来ることをStern-Gerlach実験により示した。本予備実験結果を基に、運動エネルギー0.1-1eVの範囲で10段階程度、速度調整できるビーム源を設計、製作した。 2.加熱可能な酸素分子ノズルの試作 酸素/He混合比を変えることにより運動エネルギー0.3eV程度の超音速酸素分子ビームを得ることができるが、より高速のビームを得るにはノズル加熱が必要になる。そこでノズル径20-50μmで700℃程度まで加熱可能なノズルを試作した。
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